2005年08月21日
飯島夏樹著『ガンに生かされて』
飯島さんの2作目、エッセイ『ガンに生かされて』(新潮社刊)を読む。この本は飯島さんが余命宣告を後6ヶ月(実際は3ヶ月)と宣告されてから、ハワイに移住し、執筆業が生きる糧になり、パソコンに向かって書かれたものを、インターネットで配信し、それを一冊のまとめたものであるらしい。
日々身体が弱っていく中、奥さんの寛子さんや4人の子供達の笑顔を見ながら、「生かされている」という気持ちで日々の生活、自分の体調を綴っていく。そこには所謂ターミナル(終末期)である自分の病気とどう向かって生きて生きていくかなんて大げさな感じはなく、日々生きていられることに感謝しつつ、家族と一緒にいられる生活を描いている。飯島さん以外の家族には日々の生活が別にあり、子供達は学校へ行かなければならないし、奥さんにしたって子育てなどあるわけだけど、それをベットに横たわって飯島さんは見ている。ただ、そのことがうらやましいとかいうのではなく、家族と一緒に生活しているんだということを実感している。
家族も出かけるときに、飯島さんに「生きててね」といって冗談交じりに声をかける。とにかく明るい。けど、飯島さんが吐血や下血をして、急遽入院することになって、ドクターに病状を聞くとき、奥さんが不安な顔をしていると書かれてあると、そうだろうなぁと思ってしまう。所々にその不安がのぞかれる。
でも飯島さんの身体の状態が安定しているときは、素直にそれを家族で喜び、状態が悪化すれば不安になり、心配する。ありのままの姿がそこにはあり、家族が無理をして明るく振る舞おうという白々しさはない。
宣告期間が過ぎ、ロスタイムに入った飯島さんの命を、飯島さんも含め家族が、残された時間を、病状の変化とともに、死を受け入れることを前提に共に生きている。もちろんそうなるまでにはかなりの苦しみや悲しみがあっただろうと想像されるが、そのことは一切ここでは書かれていない。残り時間の共有だけがありのままに描かれていた。それがハワイの爽やかさと同じくらい、淡々と書かれている。
- by kmoto
- at 06:18
comments