2005年11月13日

本多孝好著『MOMENT』

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 この病院には「必殺仕事人伝説」というのがあった。それは死を間近にした患者の願い事をかなえてくれるというものであって、その仕事人は掃除夫の格好ををしているという噂であった。
 大学生の神田は掃除夫のアルバイトをしている。入院している老女に頼み事を、授業料の23万9千円で引き受けた。それは老女が昔愛した男に捨てられたことの復讐をすることであった。神田はエキストラを雇い、幸せな家族の中にその老女がいることを男に見せつける。神田の口座に百万近くのお金を振り込んで老女は死んでいった。神田はそのお金を返却することが出来ず、以後4回分の必殺仕事人の仕事をすることになる。
 仕事人といっても、大したことではなく。末期の膵臓ガンでおかされた老人が南方戦線で自分の部下を日本刀で斬れと命令した上官の息子の素行調査を頼まれたり、重度の心臓病を患っている少女が、自分の友人が自殺した原因である男を捜して欲しいと頼まれたり、乳ガンを再発した女性にデートを一緒にしたり、借金取り追い回されて、保険金名義人を変更しろと迫られる会社の社長がこの病院に昔からあった別の仕事人に自分を殺してもらう依頼したの出来なくさせたり、言ってみれば些細な頼み事を引き受ける。
 こうして依頼者の悲しい人生の物語を展開していく。でもこういうのってフェアじゃないような気がする。だって病院という世界で、死を間近に控えた人間を物語にしたら、たぶんそこには不合理な死を前にして、すぐ自分の人生に納得が出来ないところがあるはずだろうから、いくつも悲しい物語が出来てしまう気がする。しかもわざわざ「必殺仕事人伝説」というのまで作ってそれを引き出すのも無理がある。こういう設定はちょっとなぁと思う。
 『真夜中の五分前』はいい小説だと思っていたので、この著者は気になっていた。だから今回この著者の文庫を読んだわけだが、正直がっかりしてしまった。まぁ同じ著者でもいい作品本と悪い作品があるだろうから、今回この『MOMENT』(集英社文庫)は失敗作に属するんじゃないかと個人的に思っている。

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