2006年10月19日

田口久美子著『書店繁盛記』

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 田口さんのことは最近よく出版業界や書店業界を憂う対談集などで出ておられ知ってはいた。リブロからジュンク堂に移られ、現在池袋本店の副店長をされるバリバリ現役の有名書店員である。この本(ポプラ社刊)は田口さんの著作では二作目となるらしい。
 従って日々の書店業務の中で感じられることがここにつづられている。読んでいるとなるほど、今は、こういう状況下に書店員が置かれているのかと思ってしまった。私などもう現役の書店員を廃業してしまっているので、書店を語るときはどうしても思い出話から話すことが出来ないだけに、どこかうらやましい部分がある。現在の書店が置かれている状況や、日々の業務の中での出来事は、新鮮である。やっぱり現役にはかなわない。自分が経験してきた本屋の日常が妙に懐かしかったし、一方でもうこれ以上経験できないのだなぁという淋しさもあった。特にいろいろ自分のいた本屋でやりたいことがあっただけに残念である。
 店員たちと本に関する与太話なども出来ないのも淋しいものだ。
 『ハリー・ポッター』の訳者が35億円の所得隠しが新聞紙上を賑わしたとき、田口さんたちは、書店に滞留している「ハリポタ本」を集めれば税金未納分の8億円に簡単になるだろうから、それを納めたらどうか、と盛り上がったというの読んで笑っちゃった。
 これなど現場にいたら同じようなことで盛り上がっただろうなぁと思う。ちなみにどうしてこれが面白いかというと、書店にある「ハリポタ本」は買切品で返品できない。しかも欲の皮が突っ張って必要以上に仕入をしてしまったので本屋さんでは余剰在庫となっている。だからそれを集めてもらって(引き取ってもらって)現物納付してくれればいいのにという意味があるのだ。

 ところで、最近単行本の定価が高くなったと思いませんか?もう1,500円以上がざらである。これがアマゾンのせいだというのだ。というのもアマゾンでは1,500円以上本を買うと送料無料というサービスを行っている。これが新刊の定価に反映してしまい、本の定価の基準となってしまっているのではないかと田口さんは言うのである。つまりアマゾンのお陰で本の定価が上がってしまったのだ。逆に言えばそれだけ現在の日本の出版界でアマゾンの影響力が大きいことにもなるのだけど、一読者としては勘弁して欲しいものである。
 たとえば300ページそこそこのこの本でも、定価1,600円もする。(税別)で、この本はそれではすまないと思ったのかどうか知らないが、本の紙質を厚くして、さもページがありますよと見せかけている。(まぁその分コストはかかっているのかもしれないが・・・)でも、紙質が厚い分、すぐページが戻ってしまい読みづらいのだ。こういうしゃらくさいことをするなら、本の定価を下げろよ言いたくなっちゃう。
 こうなってくるとつまらない考えが頭をよぎる。まず本の定価がアマゾンのお陰で高くなる。次いで本の印刷・製本がおそらくこのIT時代である、当然以前よりも小コストで出来るようになっているのではないか。しかも本の書店正味は変わらない。おそらく卸もそうであろう。ということは、誰が美味しい思いをしているかというと出版社となる。末端の書店業界が瀕死の状態に陥りつつあるのに、出版社はそれを建前では憂いつつも、形だけで、ちっとも書店に利益を配分しようとしないのは、考えてみればひどい話のような気がするが、どうであろう?
 これも与太話である。本当は仲間とこんな話ができればうれしいと思う次第だ。

 それはそうと、最近の本屋さんの棚作りがかなり難しくなっていることを知った。それは、出版される本そのものが現代の風潮を表しているところがどうしてもあるので、今までのカテゴリーで区分分けすることが難しいジャンルが多く出てきていることによる。
 たとえば今まではサブカルチャー的存在であったものが、いつのまにか支持され存在感を示すようになっているところなど、オタク的なものが、あるいは本来低年齢層で支持されていたものが、いつのまにか年齢に関係なく幅広く認められつつあるところが、出版物にも反映され、出版されている。当然これらの出版物は、今までの本屋の棚分けにうまく収まるわけがない。しかしそれに対応しないわけにもいかないし、ある意味、本屋の棚に個性を生みだすものであるから、取り入れないわけにもいかなくなっている現状があるようだ。「ボーイズラブ」や「やおい」(男性同士の同性愛を題材とした女性向けもの)などの小説や漫画、あるいはライトノベルなどもそうであろうし、思想オタク的な私には訳の分からない分野など、どうやって本屋の棚に反映していくか、かなり難しい問題を抱えていることがあるようだ。
 でも、ジュンク堂はそれらをうまく取り入れて棚づくりをしているようで、ちょっと見てみたくもなった。


評価
★★★

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