2007年01月27日

北尾トロ著『危ないお仕事!』

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 同じトロさんの本(これも新潮文庫)である。前回の『怪しいお仕事!』同様怪しげな職業、特にスポーツ新聞の求人広告などに載る怪しげな職業のルポであるが、割と最近の怪しい仕事をなされている人たちをルポしている。『怪しいお仕事!』ではパソ通なんていうものすごい懐かしい言葉があったけど、今回はインターネットにその部分が変わっているところを見ても、時代の流れを感じる。
 それにしても怪しい、あるいは危ない仕事というのは、我々のまわりにはあるようで、読んでいると、おいおいと言いたくなってしまう。ここに書くのもはばかれる仕事も、こんなことが成りたつんだと思ってしまった。
 面白かったのは、「人呼んで、裏人形師-ダッチワイフ製造業者」かな?この人元々は工業用の動力電動機や分ばん器(何なのかよく分からないが)を作っていたらしく、たまたまダッチワイフの素材に適したスポンジに出会った。そこからダッチワイフの製造業者に転向したらしい。しかしたとえ素晴らしい?スポンジに出会ったとしても、それで新しい素材のダッチワイフを作ろうなんて普通思うか?この発想の転換は普通の人じゃ出来ない。この人、奇人だよな、やっぱり。
 まずは研究用に既存のものを取り寄せ、どれもこれもいい加減で、口を開けてたり全然ソノ気になれなかったという。で、「さちこ16歳」「みちこ16歳」、「幼いあいこ」なんていう怪しげな名前のダッチワイフを作り、ヒットした。
 問題はどうして16歳や幼い子なのかである。「さちこ16歳」の設定サイズは身長152、バスト80A、ウエスト56、ヒップ56なのだそうだ。こうなったのは、運送コスト、材料の削減を考えたら、これ以上大きな女性をモデルにすると、かなりかかってしまうから、こういう設定になったという。しかもそれまでのダッチワイフは目を開けているらしく、これだとソノ気にもなれないと思うし、目を作る制作コストを考えたら、目をつぶらせた方が安く上がるから、そうしたという。変なところに経済観念が働いている。
 16歳にも意味があって、16歳は高校一年で、これを中学生にしてしまうと後ろめたさが出てしまうから、こうなったという。これには大笑いした。これらの人形には、自分で化粧も出来るらしく、下着や陰毛のオプションもあるらしい。まったくどういう世界なのだ!いささか呆れてしまった。
 それ以外は前回同様、虚しさだけが残っただけであった。

評価

★★

書誌
書名:危ないお仕事!
著者:北尾 トロ
ISBN:9784101282527 (4101282528)
出版社:新潮社 (2006-06-01出版) 新潮文庫
版型:290p 15cm(A6)
販売価:499円(税込) (本体価:476円)

2007年01月19日

北尾トロ著『怪しいお仕事!』

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 私がトロさんをネットの古本屋さんとして初めて知った。その関係のトロさんの本を2冊読んでいる。それらの本を読んでトロさんの経歴を知り、本業がルポライターであることを知った。しかもちょっと変わったテーマを追うライターだと知った。で、ちょっと読んでみたいと思い、トロさんの著作4冊を文庫本で購入した。今回その第一弾だ。
 この本(新潮文庫)の親本は多分昔あった三才ブックスの「裏モノ」シリーズの1冊じゃないかと思う。(確信はないが・・・)
 人には他人には言えない趣味や欲望があって、それを逆さにとって商売にしている人たちがいる。当然公に出来ないから、裏家業となる。その分リスクは大きいけど、儲けも大きい。ハイリスク、ハイリターンってやつだ。
 この本はそうした怪しい職業?で生計を立てている人達を追っている。悪徳興信所、競馬予想会社、競馬の予想屋、カギ師、野球賭博師、幽霊ライター、「車で融資」の金融業者、お寺売買のコーディネーター、ポーカー賭博屋、ヌード撮影の仕掛人、必殺掲示人、寝室覗き屋である。これらの裏職業の実態を読んでいると、人生の裏を垣間見られる。触れられたくないところを見てしまうので、大きな儲けともなる。またやりようによっては悪徳業者にもなれる。まっとうな人間がする商売ではないけど、こういう人たちを必要とするかたぎの人間もいるから、こうした虚業が成りたつわけだ。けれど下手をすれば手が後ろに回る商売でもある。
 だから競馬の予想屋が言っているが、「悪いことを長いこと続けている人間ならわかることだけど、悪いことって腹八分でやめないと必ずパクられたり痛い目に遭うことになるんだ。腹一杯まで欲張ったヤツって、みんな消えているしね」とどこが潮時か分かっているところが面白い。というより、どこか虚しさが漂っていて、しかもこうした家業に就いていると神経がずたずたになるのか、引き時をいつも考えているようにも思えた。読む方へぇ~と思うより、虚しさだけが残っただけであった。

評価
★★

書誌
書名:怪しいお仕事!
著者:北尾 トロ
ISBN:9784101282510 (410128251X)
出版社:新潮社 (2006-04-01出版) 新潮文庫
版型:286p 15cm(A6)
販売価:499円(税込) (本体価:476円)

2007年01月17日

林總著『餃子屋と高級フレンチでは、どちらが儲かるか?』

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 この本(ダイヤモンド社刊)は、社長であった父親が急逝し、その娘で父親が経営するアパレル会社のデザイナーであった由紀が株主総会の決議で社長になってしまったところから始まる。当然由紀は会社の経営も会計も分からない。(このあたりはかなり無理があるが・・・)その上引き継いだ会社は借金漬けで、銀行も社長が代わったことで、融資を打ち切り、回収を急ぐ事態となった。

 そんな会社を由紀と同じマンションに住み、大学で会計を教えている安曇に力を借りて何とか立て直そうと由紀はする。安曇はコンサルタント及び会計のレクチャーをを由紀にする条件として、レクチャーは月に一回、美味しい食事をしながらすること、そして教えたことは必ずその月に実行することを条件にして、引き受ける。
 この美味しい食事をしながらというのがミソで、ある時は寿司屋で、またある時は高級フレンチのお店で、または場末の餃子屋で、そこのお店で出される料理を堪能しながら、食材やそのお店の性格をテーマしながら、会計と何かを安曇は由紀に会計や経営をレクチャーしていく。
 たとえば、寿司屋ではコハダと大トロではどちらが儲かるかという質問を由紀にする。大トロは仕入値が高く、いつも手に入るわけではないので、市場にあれば多めに仕入れる。しかもすべて売り切れるまでに1カ月かかるとする。一方コハダは仕入値が安く、新鮮さが売り物だから、その日に売り切れる量を仕入れをするとする。
 細かい計算はあるのだけど、大トロは完売するのに1カ月かかるわけだし、コハダは毎日完売する。しかも仕入れ値も売価も安いから大量に出るはずだ。となれば、在庫として留まっている時間が大トロと違い、ない。すべてその日に現金化する。しかもコハダの方が大トロよりも多く利益が出るのである。このことから、在庫の持ち方、リードタイムの短縮が極めて重要な課題であることを示唆するのである。
 またこの本の書名にもなっている餃子屋と高級フレンチのお店ではどちらが儲かるのかも、それぞれのお店に行って、限界利益(売上-材料費)と固定費の関係から、お店の特徴を説明していく。限界利益は高級フレンチのお店の方が餃子屋と比べて、圧倒的に高くても、お店の維持費が高級感を演出するため固定費が高い。そのため損益分岐点が高くなる。このバランスでどちらが儲かるのかを説明していくのである。そしてまずは会社はこの損益分岐点を目指すことが最低条件であることをレクチャーしていく。

 こんな感じでこの本は、グルメと会計をうまく結びつけて、会計の入門書を面白くしている。その上で決算書の読み方を安曇は由紀に教え、会社の経営状況をそこから読み取れるようにさせていくのである。その結果、経理部長の不正さえ見抜けるようになっていく。
 安曇は面白いことを言っている。会社が重視する利益とは、「売上と費用の差額概念で、利益は計算の結果であって、手にとって確かめることができない」と。
 更に「真実を表現した決算書はこの世には存在しない。決算書が伝える情報には、会社の主観が織り込まれている。その主観によって利益は変動する」というのだ。だから「会計は自然科学のように絶対的な真理を追求するものではない。ルールの上に立った相対的な真実を追求するものなのだ」とする。そのルールも会社が選択する会計ルールがいくつか用意されており、その選択は会社の意思で行うことができる。要は選択したルールが継続して適用されることによって、それが正しくなるというのだ。
 こうして「描き出された結果(決算書)は、会社の実態の正確な写像ではなく、要約された近似値にならざるを得ない」とする。それでも「会計は非常に重要だ。しかし会計数値は事実ではない。事実を把握するとっかかりと考えるべきだ。つまり、会計数値で異常を見つけたら、そこを突破口にするのだ。現場に行き、関係者の話しを聞き、とことん原因を突き止める。そうすれば、自ずと真実が見えてくる。改善の手だても見えてくる」と会計を手段として、いかに使うかを説くのである。


評価
★★★

書誌
書名:餃子屋と高級フレンチでは、どちらが儲かるか?―読むだけで「経営に必要な会計センス」が身につく本!
著者:林 總
ISBN:9784478470886 (447847088X)
出版社:ダイヤモンド社 (2006-09-28出版)
版型:225p 19cm(B6)
販売価:1,575円(税込) (本体価:1,500円)

2007年01月05日

東野圭吾著『使命と魂のリミット 』

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 正月用に買った本(新潮社刊)である。従って肩のこらないものを選んだつもりである。で、確かにさらりと読め、しかも悪くはなかったとは思うが、最後はやはり物足りなさを感じてしまったのはなぜだろうか?なんか妙にヒューマニズムにあふれた終わり方が、そう思わせたのだろうか?
 せっかく病院をパニックに陥れる大胆な設定を作り上げ、そんなパニックの中手術が行われ、緊迫感を演出したのに、最後に犯人の良心に訴えかけることで事件を解決しようとしたのはもったいない感じがする。だから最後は妙に甘い感じになってしまっている。その点は残念であった。でも、ちょっとしたサスペンスのご希望の方にはおすすめかも・・・。

評価
★★★

書誌
書名:使命と魂のリミット
著者:東野 圭吾
ISBN:9784103031710 (4103031719)
出版社:新潮社 (2006-12-05出版)
版型:376p 19cm(B6)
販売価:1,680円(税込) (本体価:1,600円)

2007年01月04日

滝田誠一郎著『長靴を履いた開高健』

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 あけましておめでとうございます。
 まずは今年第一発目は滝田誠一郎さんの『長靴を履いた開高健』から始めたい。
 この本は小説家開高健ではなく、長靴を履いた釣り師開高健の本に関する評論及び裏話、後日談を書いた本である。
 開高さんの釣りに関する本は主に『私の釣魚大全』、『フィッシュ・オン』、『オーパ』、『もっと遠く!』、『もっと広く!』、それとなんだかよく分からなくなってきた『オーパ、オーパ』編の5冊がメインとしてある。


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 以上が私の所有している開高健さんの釣りに関する本である。『私の釣魚大全』はこの後、『完本私の釣魚大全』として発刊される。また開高健全ノンフィクションの1巻『河は眠らない』はこのシリーズの第1巻として、それまでの釣りに関する著作をまとめたものである。収録作品は『 フィッシュ・オン』と『私の釣魚大全』と重複する。

 さて、この『長靴を履いた開高健』に限らず、開高さんの死後、開高さんに関する本が数点出版されている。気がついたものは購入しているが、この本もその中の1冊である。ただ、開高さんの死後開高さんについて書かれた本は、生前開高さんと何らかの交流があった人、たとえば一緒に釣りに行ったとかいった人たちが書いた本なのだが、この本の著者はそうではなく「いち開高ファン」であった。だからある程度距離を置いて、あるいは開高健という「毒」から逃れて、開高健という釣師を眺めている。「小説家・開高健を論じることは無理でも、釣師・開高健ならば自分の取材対象になりうるのではないかとぼんやり考えるようになった」といっているくらいだから、開高健という釣師を取材対象として、他の人たちとはちょっと違った視点で眺めているかもしれない。
 なので、時には仲間内では言いにくいことをはっきり言っている。その中で開高さんの釣りに関しての批評は、確かにそうかもしれないと思った。ここでは当時一緒に釣り仲間から貴重な言葉を添えている。
「だけど、開高さん釣りっておおざっぱなんですね。繊細さがない。おおざっぱにルアーをぶん投げて、ただグッグッとリトリープして、それで魚がガツンとくればよしというような釣りだった。いってみれば大名の釣りですよ。いつも釣れる場所で釣っていたからそれでもいいんでしょうけど。
 場荒れした川や湖でスレきった魚を相手にしているわれわれ一般ピープルは、小物1匹釣るために仕掛けや釣り方に細心の注意を払い、ありとあらゆる工夫をしている。そういう釣り師からすると開高さんの釣りはおおざっぱですよね」
 結局開高さんの釣りは本ではうまい話が自分のところ飛び込んできたように書かれているけれど、どうも違うようだ。開高さんの方から無理を言って、禁漁区で釣りをさせてもらっている。だから魚もスレていないから、大物が釣れる。
 あるいは自分の立場を利用して、出版社やウイスキー会社に無理をいって金を出させ、北米から南米へとそれこそ開高隊と称して乗り込んでいく。そこでは有名な日本の作家が来るということで、現地に詳しい人が動員される。それが開高さんが書いた釣りの本の実態なのだろう。
 つまり庶民が楽しむ釣りではないのだ。もっともそれだからいいという考えもある。我々庶民ができないおおざっぱな釣りをやって、それを本にして楽しませてくれているのだからという考え方もできるが・・・。私の場合単純に本の写真の美しさ、話のおもしろさを楽しんでいるだけであったが、現実は醜い部分が嫌というくらい、この本の中に隠れていることを知らされた。

評価
★★★

書誌
書名:長靴を履いた開高健
著者:滝田 誠一郎
ISBN:9784093411226 (4093411220)
出版社:小学館 (2006-06-20出版)
版型:271p 19cm(B6)
販売価:1,680円(税込) (本体価:1,600円)