2007年01月17日

林總著『餃子屋と高級フレンチでは、どちらが儲かるか?』

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 この本(ダイヤモンド社刊)は、社長であった父親が急逝し、その娘で父親が経営するアパレル会社のデザイナーであった由紀が株主総会の決議で社長になってしまったところから始まる。当然由紀は会社の経営も会計も分からない。(このあたりはかなり無理があるが・・・)その上引き継いだ会社は借金漬けで、銀行も社長が代わったことで、融資を打ち切り、回収を急ぐ事態となった。

 そんな会社を由紀と同じマンションに住み、大学で会計を教えている安曇に力を借りて何とか立て直そうと由紀はする。安曇はコンサルタント及び会計のレクチャーをを由紀にする条件として、レクチャーは月に一回、美味しい食事をしながらすること、そして教えたことは必ずその月に実行することを条件にして、引き受ける。
 この美味しい食事をしながらというのがミソで、ある時は寿司屋で、またある時は高級フレンチのお店で、または場末の餃子屋で、そこのお店で出される料理を堪能しながら、食材やそのお店の性格をテーマしながら、会計と何かを安曇は由紀に会計や経営をレクチャーしていく。
 たとえば、寿司屋ではコハダと大トロではどちらが儲かるかという質問を由紀にする。大トロは仕入値が高く、いつも手に入るわけではないので、市場にあれば多めに仕入れる。しかもすべて売り切れるまでに1カ月かかるとする。一方コハダは仕入値が安く、新鮮さが売り物だから、その日に売り切れる量を仕入れをするとする。
 細かい計算はあるのだけど、大トロは完売するのに1カ月かかるわけだし、コハダは毎日完売する。しかも仕入れ値も売価も安いから大量に出るはずだ。となれば、在庫として留まっている時間が大トロと違い、ない。すべてその日に現金化する。しかもコハダの方が大トロよりも多く利益が出るのである。このことから、在庫の持ち方、リードタイムの短縮が極めて重要な課題であることを示唆するのである。
 またこの本の書名にもなっている餃子屋と高級フレンチのお店ではどちらが儲かるのかも、それぞれのお店に行って、限界利益(売上-材料費)と固定費の関係から、お店の特徴を説明していく。限界利益は高級フレンチのお店の方が餃子屋と比べて、圧倒的に高くても、お店の維持費が高級感を演出するため固定費が高い。そのため損益分岐点が高くなる。このバランスでどちらが儲かるのかを説明していくのである。そしてまずは会社はこの損益分岐点を目指すことが最低条件であることをレクチャーしていく。

 こんな感じでこの本は、グルメと会計をうまく結びつけて、会計の入門書を面白くしている。その上で決算書の読み方を安曇は由紀に教え、会社の経営状況をそこから読み取れるようにさせていくのである。その結果、経理部長の不正さえ見抜けるようになっていく。
 安曇は面白いことを言っている。会社が重視する利益とは、「売上と費用の差額概念で、利益は計算の結果であって、手にとって確かめることができない」と。
 更に「真実を表現した決算書はこの世には存在しない。決算書が伝える情報には、会社の主観が織り込まれている。その主観によって利益は変動する」というのだ。だから「会計は自然科学のように絶対的な真理を追求するものではない。ルールの上に立った相対的な真実を追求するものなのだ」とする。そのルールも会社が選択する会計ルールがいくつか用意されており、その選択は会社の意思で行うことができる。要は選択したルールが継続して適用されることによって、それが正しくなるというのだ。
 こうして「描き出された結果(決算書)は、会社の実態の正確な写像ではなく、要約された近似値にならざるを得ない」とする。それでも「会計は非常に重要だ。しかし会計数値は事実ではない。事実を把握するとっかかりと考えるべきだ。つまり、会計数値で異常を見つけたら、そこを突破口にするのだ。現場に行き、関係者の話しを聞き、とことん原因を突き止める。そうすれば、自ずと真実が見えてくる。改善の手だても見えてくる」と会計を手段として、いかに使うかを説くのである。


評価
★★★

書誌
書名:餃子屋と高級フレンチでは、どちらが儲かるか?―読むだけで「経営に必要な会計センス」が身につく本!
著者:林 總
ISBN:9784478470886 (447847088X)
出版社:ダイヤモンド社 (2006-09-28出版)
版型:225p 19cm(B6)
販売価:1,575円(税込) (本体価:1,500円)

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