2007年02月22日

飯倉晴武編著『日本人のしきたり』

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 この手の本は、読んでいて、へ~え、そうなんだ!と思い知ることが多い。普段何の疑問も感じないで、習慣や行事、あるいは冠婚葬祭を執り行っている。けれどよく考えてみると、どうしてこうなんだと疑問を感じてもいいところがある。何故こうしなければならないのか、その由来など知っておいてもいいものが結構あるような気がする。この本はこうしたよく考えてみると、不思議な習慣、行事、冠婚葬祭など、何故今のような形になったのか、あるいはその由来を教えてくれる。
 もともと「太古の日本では、あらゆる自然に霊魂を認め、それを畏怖し、崇拝するアニミズムと呼ばれる原始信仰が生まれます。やがて卑弥呼に代表される巫女など、神のご託宣を受けて物事を決めるシャーマニズムに発展していきました。
 一方で、狩猟採集生活をしていた日本人も、米の伝来にともなって農耕生活へと変わっていきます。農耕生活はとりわけ、人間の力の及ばない自然現象に大きく左右されます。天候不順や自然災害による不作はまさに死活問題で、それらを神の怒りと考えたのも無理からぬことでした。そこから、あらゆる自然の営みに神を見いだし、崇める傾向がさらに強まっていったと思われます。
 また、農耕社会で定住生活が始まると、土地に対する信仰も強まっていきます。自分たちが生まれた土地を守ってくれる神を「産土神」と崇め、産土神を祀る社を作るようになっていきました。さらに古来の先祖信仰も合わさって、日本ならではの神々への信仰が根づいていったと考えられます」と著者は日本の信仰の原点を説明するが、これに仏教、中国古来の思想が加わって、日本独自に変化していったものと思われることを各所で説明する。

 昔から日本人は、ふだんどおりの日常生活を送る日を「ケ(褻)」の日と呼び、これに対して、神社の祭礼やお寺の法会、正月や節句、お盆などの年中行事、冠婚葬祭を行う日を「ハレ(晴れ)」の日として、単調になりがちな生活に変化とケジメをつけていた。
 「ハレ」のときは、日常から抜けだして、特別な一日を過ごす。ハレの日用の着物(晴れ着)を着たり、神聖な食べ物である赤飯や餅を食べたり、お酒を飲んで祝ったりして、特別な日であることを示したのである。
 一方「ケ」はふだんどおりの生活を送る日ですが、「ケ」の生活が順調にいかなくなることを「気枯れ」、つまり、「ケガレ」になるとし、特に死や病、出産などはケガレと考えてきた。(なぜお産がケガレかというと、医療が発達していない時代のお産は母子とも死の危険をともなった一大事だったから)
 日本では神話期からケガレを忌み嫌い、神に近づくのにふさわしい体になるために禊ぎをし、身のケガレを取り除いて清め、お祓いをした。そして、このケガレを取り除いた状態が「ハレ」だったのである。

 この本は「正月のしきたり」、「年中行事のしきたり」、「結婚のしきたり」、「懐妊・出産のしきたり」、「祝い事のしきたり」、「贈答のしきたり」、「手紙のしきたり」、「葬式のしきたり」、「縁起のしきたり」と章を分けて、具体的に説明していく。
 たとえば「正月のしきたり」のなかでしめ飾りに何故しめ縄、ウラジロ、ユズリハ、ダイダイをあしらってあるかといえば、ウラジロは常用の葉であることから長寿を、ユズリハは新しい葉が出てきて初めて古い葉が落ちることから、次世代に家系を「譲って絶やさぬ」という願いを込め、ダイダイは家が代々栄えるようにといった縁起物として、しめ飾りに使われるようになった。これらウラジロ、ユズリハ、ダイダイは鏡餅にも同様の願いで飾られている。
 まためでたい初夢を「一.富士、二、鷹、三、茄子、四、綿、五、煙草・・・」というが、何故そうなのかといえば、これらすべて駿河の名物であって、これは当時天下を取った三河出身の徳川家康にあやかりたいという庶民の願望があって、こうした夢を見ようとしたものだという。
 「結婚のしきたり」では、披露宴を待つ間出される桜湯がお茶でなく、何故桜湯なのかは、お茶は「お茶を濁す」に通じるということで敬遠され、見た目も、縁起もいいということで桜湯を出すようになったという。また結婚披露宴で「引出物」を渡すが、これをなぜ「引出物」というかというと、平安時代の貴族の間では馬を引き出して贈ったというのがその語源。
 「祝い事のしきたり」では満60歳になると「還暦の祝い」を行うが、何故60歳が還暦なのかを説明する。
 かつて日本人は十干(甲・乙・丙・丁・戊(ぼ)・己(き)・庚(こう)・辛・壬(じん)・癸(き))と十二支(子(ね)・丑(うし)・寅(とら)・卯(う)・辰(たつ)・巳(み)・午(うま)・未(ひつじ)・申(さる)・酉(とり)・戌(いぬ)・亥(い))を組み合わせて甲子(きのえね)・乙丑(きのとうし)等60種のよび名を作り、生まれ年から時刻、方位など、様々な事象を表してきた。昔は数え年で年齢を数えていたので61歳で再び生まれた年の干支に一回りして戻る、つまり還暦となったから、「生まれ直すこと」を祝い、赤ちゃんの時着ていたような赤い頭巾とちゃんちゃんこ贈って、無病息災を祝福するのである。
 「手紙のしきたり」では、「拝啓」で始めると、「敬具」で締めるが、「拝啓」は「拝=つつしんで」「啓=申し上げる」という意味で、「敬具」は「敬=つつしんで」「具=申し上げました」という結びの意味だそうだ。また時候の挨拶を省略する場合、「前略」で始めて、「草々」で終わるが、この「草々」とは「ぞんざいな走り書きで、失礼します」という意味だという。
 「縁起のしきたり」では、厄年の事例を説明する。厄年は、男は42歳、女は33歳だが、この42歳は「死に」、33歳は「散々」に通じるということで、大厄とされた。元々は平安時代の陰陽道の考えに基づいて広まったものだが、一般的に男女ともこの年齢になると、体調の点でも、社会的役割の点でも大きな変化が起こりやすいため、この信仰がいまだに影響を与えているという。

 ということで日本の習慣、文化にある決めごとには深い意味があることを知る。


評価
★★★


書誌
書名:日本人のしきたり
著者:飯倉 晴武【編著】
ISBN:9784413040464 (4413040465)
出版社:青春出版社 (2003-01-25出版)
版型:200p 18cm 新書 判
販売価:700円(税込) (本体価:667円)

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