2007年03月02日
司馬遼太郎著『街道をゆく』28巻
また司馬さんの『街道をゆく』に戻る。今回は全編韓国済州島の旅である。司馬さんは韓国の友人や知人と一緒に済州島の各地を訪ねる。
今回はこの内容からそれる。ただまったく関係ないわけでもない。
私がかねがね疑問に思うことがある。それはどうしてあんなに韓国や朝鮮の人々がいつも感情的に怒っているのだろうかということである。私には韓国の友人がいないのでよく分からないが、テレビに映る韓国や朝鮮の人々がいつも感情的に怒っているように思える。なんであんなに激高するんだろうとさえ思ってしまう。もしかしたらそれが民族的特徴なのだろうかと思う次第だ。論理的に、あるいは行動に他を認めない鋭さを感じてしまうのだ。
たとえば日本の戦争責任や靖国問題など怒りたくなる理由は分からないわけではない。確かに日本はこれらの人々を蹂躙してきた。それは動かし難い事実である。だけどそのことをいまだに、こと何かある度、非難し続けるその理由が、被害者としての言うべき権利があることは認めるにしても、それを言い続けることが果たしてプラスになるのだろうかと思えるほど過激な部分を感じてしまう。
もちろんこのことは非難されることも承知の上で言っている。しかし彼らが激高して日本を非難すればするほど、我々は引いてしまうところがある。正直な話、いつまで言い続けるのだという思いさえしてしまう。司馬さんも次のように言っている。
「私自身は、韓国・朝鮮が固有の気品ある文化を連続させてきたという点で、世界でも数すくない民族だと思ってきたし、この民族への尊敬心をうしなったことがない。
だから、自国が近代史の中で三十六年間やったこと(日韓併合のこと)を、一市民である私が一身に背負っていちいち韓国・朝鮮人に頭をさげて歩くなどはかなわない。そういうことなら、この国の土を踏んだり、あるいはこの民族のひとびとつきあったりするなどしない。そのへんが、私は図々しくできているのである」
司馬さん自身も日本が過去にやってきたことの後ろめたさを充分感じているものの、本音の部分では「かなわない」と言っている。言ってしまったことで自分自身を「図々しくできている」といってなんとか言葉をやわらげるほど気を使っている。
今回この巻で、韓国や朝鮮の人々の中にあるこうした気質の源泉の一つが、朱子学にあるのではないかと思えるくらい、司馬さんはしつこいくらい朱子学に言及される。司馬さんは「私は朱子学の不毛な理屈っぽさがきらいだから、このことにやや私情が混入しているかもしれない」と断った上で、李氏朝鮮500年間朝鮮の知識人の歴史に朱子学はマイナス要素を与え続けたという。
李氏朝鮮は1392年に興り、1910年に終わった。その間朱子学を官学とし、他の思想を許さなかった。その思想的弾圧は凄惨なもので、朱子学以外の思想をもつ人に対して容赦なく弾圧し続けた。
日本ではこの500年の間、室町の貿易時代があり、応仁の乱があり、戦国時代があり、織豊の天下統一があり、江戸時代があり、明治維新があり、日露戦争があったが、朝鮮はどっぷりと朱子学のつかったまま、文化的停滞をしたままであり、近代化の準備が遅れた。その弱点を日本は衝いたのである。
司馬さんの説明によると、朱子学は極度にイデオロギー学で、正義大系であり、正邪分別論の大系でもあったとする。その得意とするところが、大義名分論で、何が正で、何が邪かということを論議することにあった。
こうした大義名分論を始めると、カミソリのような薄刃を研ぎに研いで、自傷症のように自らも傷つけ、他も傷つけたりする。これが年代を経れば経るほど、正の幅が鋭くなり、ついには針の先端の面積ほどもなくなってしまう。その面積以外は邪なってしまう。
これが今の韓国や朝鮮の人々のそれこそDNAに刷り込まれてしまい、彼らの気質となって残ってしまったのではないか、と私はこの本を読んで思ったのである。彼らの理屈っぽさはここに由来しそうだし、その議論の鋭さは、朱子学が求める鋭さと似ているような気がするのである。
今回に限らず、このシリーズで何度か朝鮮における朱子学の悪影響を指摘してきた司馬さんがこの巻ではこれほどまでくどく朱子学を非難するのかよく分からないが、ただこうした歴史背景が韓国や朝鮮の人々に何らかの影響を与えたことは事実だろう。私はただ彼らの激しさ、鋭さがこのあたりからも由来するのではないか、とふと推察したのである。
『街道をゆく』28巻の「耽羅紀行」は週刊「街道をゆく」の44巻に収録されている。
書誌
書名:街道をゆく〈28〉/耽羅紀行(たんらきこう)
著者:司馬 遼太郎
ISBN:9784022555489 (4022555483)
出版社:朝日新聞社 (1986-11-30出版)
版型:398p 19cm(B6)
販売価:1,890円(税込) (本体価:1,800円)
- by kmoto
- at 05:54
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