2007年04月11日

浅井 輝久著『ABC青山ブックセンターの再生』

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 この出版社は時たま、おや?と思う本を出版するので、ちょっと目が離せないところがある。今回も元書店員としてこの本を読んでみた。ただこちらが望んだ内容ではなかった。
 私は何故青山ブックセンター(以後ABCという)が倒産し、その後どうのような経緯をたどって再生したのか、そのあたりを詳しく知りたかった。けれどこの著者は自らがABCの幹部職員の社員教育を行っただけの人(経歴が面白く、元自衛官)なので、その中で知り得たABCの書店としてシステムがどういうものであったかを説明するのにかなりのページを費やしている。その独自性(そのほとんどが汎用的ではない)を自画自賛するだけであって、いってみればマスターベーションに過ぎない感じだ。(読んでいても苦痛であった)

 そんな中、どうしてABCが倒産したのかをわずかに書かれている。
 ABCの倒産は、いわゆる中小書店の倒産とはちょっと違うようだ。2003年度ABCは7店舗、総売場面積1437坪、総売上は43億円の独立系専門書店であった。書店としては黒字経営だったという。ただ利益のほとんどを銀行の借入金返済に回ってしまったので、栗田出版(取次)への支払が滞ってしまい、栗田が破産宣告を裁判所に申請し、本を引き揚げて倒産した。
 資金繰りの都合がつかなくなった理由として、ABCがいわゆるバブルを利用して銀行から多大な借入をし、バブル崩壊後そのツケを支払わされて、その犠牲になったのと、「出版バブル」の犠牲になったことのよる。
 90年代1万店の書店が廃業した。ところが書店の売場面積は増えている。それは小さな書店がどんどんつぶれても、その書店を上回る売場面積を持つ大書店が生まれたことによる。
 そこへ取次がシェアー争いを始める。1万店以上の書店つぶれていくのである。当然新規の大型書店の奪い合いが始まる。店舗数は激減しても、大型書店を取れば、売場面積でそれをカバーできるからである。そこで好条件取引をそれらの書店に打ち出す。それが「開店口座」というシステムであった。この「開店口座」というのは何かというと、この本では次のように説明する。

「新規出店に商品が1億円必要であるとした場合、仮に雑誌が1,000万円で、残りの9,000万円が書籍とすると、この9,000万円の書籍部分が開店口座扱いとなる。この9,000万円の支払を2年間据え置きで3年目から月300万円ずつ30カ月で支払うというものである」

 この「開店口座」は出店時の商品代金の支払いが先延ばしでき、初年度の経費が低く抑えられるため、出店のハードルを低くした。そのことがかえって大型書店の出店ラッシュを促すこととなった。
 しかし、本がばんばん売れていれば、先延ばしした取次への支払も可能だろが、出版不況で右肩下がりで売上が低迷し続ければ、3年後の支払はかなりきつくなる。そこにバブル崩壊で銀行の締め付けも加わる。これがどうやらABCの倒産理由のようだ。ここに中小書店が売上低迷で、資金繰りの困り倒産するのとは違うというのも納得できた。
 私がいたのは中小弱小書店だったから、大型書店だけに適用される「開店口座」なんて知らなかったけれど、なるほどこういうからくりがあったのかと知らされた。

閑話休題
「出版バブル」の一面に年間6万5千点を超えるアホみたいな新刊ラッシュがある。どうしてこんな膨大な新刊が出版されるのかその理由を書く。
 出版社は本を取次に本を納入すると、その代金が前金で入ってくる。そしてその本が返品されると、その代金を前納された代金を取次に返すことになる。ところが出版社はそのお金を返す代わりに、違う新刊を出して納入し、その代金と相殺するようになる。このシステムが「出版バブル」の元凶となる。つまり売れずに返ってくる本が多ければ多いほど、どんどん新刊を印刷し納入することとなるのである。これが年間6万5千点を超える出版物となったのである。自転車操業も甚だしい。

 だいたい私はABCが青山とか六本木とか華やかなところで、夜通し営業していて、有名人が贔屓にしている本屋で、ビジュアル系の本を数多く置いて、その手の人たちだけに支持されている本屋だと思っている。つまり一般的な本屋さんとはちょっと趣を異にする。当然私もそれほど興味がわく本屋ではない。倒産したときもチヤホヤされたから、いい気になったのだろうとさえ思っていた。だからABC独自の販売システムには基本的に興味がない。ただその根底にある考え方は、なるほど思える部分はあった。面白いなと思ったことを書く。

「書店で買う雑誌とコンビニで買う雑誌に変わりはないが、書店で買う時のプラスアルファ、少し得した感じをコンビニに求めることはできない。そして書店も巨大化し、あふれるほどの本があるだけで、なぜか落ち着けない空間になった。豊かそうに見えて、何かいつも足りないような感じ、そんな書店が増えつつある」と著者は書いている。これすごくよく分かる。先日新宿のジュンク堂へ行ったとき同じ感じがしたのだ。もちろんコンビニには最初からプラスアルファなど求めていない。
 そこでABCは「書店という器を、読者と本の作り手との出会いの広場にしたい。否、書店はそういう役割を果たすべきである。これがABCの書店を『出会いの広場』とするコンセプトである」という。そこで学芸員という独自のシステムを作り、彼らがお祭りの広場をお店に展開することでABCの個性を演出した。これがABCの強烈な個性となり、贔屓客が増えた理由なのだろう。ただし何度も言うように、これはABCでは機能したが、一般書店ではどうなのだろうかという疑問はわく。ただ、そういうコンセプトは一般書店でも形は違うにしても考えられつつあるのではないだろうか?


評価
★★


書誌
書名:ABC青山ブックセンターの再生―独立系専門書店が名前を残した理由(わけ)
著者:浅井 輝久
ISBN:9784289502103 (4289502105)
出版社:新風舎 (2007-04-05出版) 新風舎文庫
版型:223p 15cm(A6)
販売価:689円(税込) (本体価:657円)

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