2007年05月17日

志水辰夫著『生きいそぎ』

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 この本もお茶の水の丸善で、POPにつられて買ってしまった本である。(私にとってこの本屋は鬼門かもしれない)本の裏表紙に次のように書かれている。「定年を迎えたり、親しい友人が亡くなったり、親やきょうだいの法事に集まったりするとき、ふと胸をよぎるのは、幼かった頃のことや、最も輝いていた時期のことだ。人は皆、戻るべき故郷があるというけれど、戻ればそこは、変わり果て居場所さえもままならない。でもまた生きてゆかなければならない。老いに向かう人生の「秋」を叙情豊かに描く短編小説集」
 これを読んでちょっと読んでみようかなぁという気になった。歳のせいか、こういう「人生の『秋』」なんて書かれると、どうしても気になるのである。やばいなとは思っているのだけれど・・・。

 この本は「人形の家」、「こういう話」、「五十回忌」、「うつせみなれば」、「燐火」、「逃げ水」、「曼珠沙華」、「赤い記憶」の8編の短編で成っている。ただ、どれもどうってことはなかった。今回は完全に丸善の文庫担当者にだまされたことになる。
 題名自体なんか人生の哀愁を物語るけれど、だいたいこれら作品で何を言いたいのかよくわからなかった。どの短編も、子供時代に何らかの問題のある過去を持っていて、それが大人になり、仕事などで忙しくなって、一時忘却の彼方に追いやれる。しかし現役をリタイヤしてから、時間をもてあますためか、忘れていた拭い去りがたい過去がむくむくと頭をもたげ、かつて自分の子供時代の故郷に帰り、それを振り返るというパターンである。ただそれだけである。だからなんだというのだろうか?人は人生の秋を迎えるとこうなるとでも言いたかったのだろうか?
 その上、
「同時にふたつ以上にことをすると、片方のことを忘れてしまう。最近割合そういうことが多いのだ。脳が現実の多様性に対応しきれなくなっている。こういうかたちで老いを目の前に突きつけられるのは、あまり気持ちのいいものではなかった」

「仕方ないさ。人間の歴史なんて、しょせん有限なんだ。その人間ごとに、自分が立ち会ってきた歴史を大事にするほかない」

「若者にはいつだって住みにくい世のなかなのだ」

 といった人間歳をとるとなる状態や、冷め切った考え方が作品にちらちらと顔をだす。あ~、嫌だ、嫌だ。ちっとも叙情豊かじゃない。


評価


書誌
書名:生きいそぎ
著者:志水 辰夫
ISBN:9784087460124 (4087460126)
出版社:集英社 (2006-02-25出版) 集英社文庫
版型:319p 15cm(A6)
販売価:579円(税込) (本体価:552円)

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