さて、そろそろ「洋酒天国」そのものについて書いてみたい。私がこの雑誌を手に入れたいと思っていても、なかなか手に入らなかったことは書いた。やっとの思いで、ネットの古本屋さんを介して手に入れた。
そのためこの雑誌には思い入れが強い。以前のブログでこの『洋酒天国』のことを書いたこともあるが、なくなってしまったので、もう一度このブログのCoffee Breakで書いてみようと思っていた。たまたま小玉さんの本が出版され、それを読んだので、それじゃもう一度書いてみようと思いたった。
といっても、私が手に入れた「洋酒天国」は14冊である。しかも入手可能なものから手に入れたものだから、号数もまちまちである。
また、予算の問題もある。今この雑誌は古本価格で1冊平均2,000円ぐらいする。だから今のところここまでにとどまっている。元はタダの雑誌がである。
ということで「洋酒天国」のことを書くといっても、たいしたことが書けない。ただここに便利な本がある。それが開高健監修の『アンソロジ-洋酒天国』である。この本も20数年前に出版された。当時「洋酒天国」が手に入れられなかったから、せめてこの本で当時の雰囲気を味わいたいと思って購入した。今回それを初めて読んでみた。
「『洋酒天国』は昭和三十一年に創刊。現サントリー株式会社の前進である<洋酒の寿屋>のPR誌である。
その頃はようやく電気冷蔵庫と電気掃除機が登場しはじめ、ドブロク、バクダン、焼酎の時代がやっと終わって、トリスバーがニッポン国の夜を北から南まで蔽っていた。そしてPR誌はまだ氾濫せず、プレイ雑誌もまたなかった。飲んで、騒いで、ワカル、ワカルといって肩をたたきあったあげく、深夜の駅のベンチにゲロを吐いて倒れる。すべての男たちはかなしくも旺盛にこの姿態にいそしむしかなかったのである。
ここにおいて寿屋は一念発起。ドリンカーの民度向上をめざしてヨーテンの発刊を思いたち、トリスバー、サントリーバーへかよわなければ手に入らない、夜の岩波文庫(?)とでも呼ぶべき快文書の出版と流布に没頭することと相成った。これがヒット、またヒットし、終刊後も古書市場でバックナンバーが高額で取引される放射能を帯びるまでになったのは、ヨーテン同人の一人として欣快至極」
と開高さんがこの本の最初に書いている。「夜の岩波文庫」とはよく言ったもんだと思うが、なかなかうまい言い方だ。ここに書かれているように、バックナンバーが古本業界で高値で取引されている。それはトリスバーで無料で配られたことで、わざわざ持ち帰って保存しておくような奇特な人が少なかったのではないかと思うのだ。まして酒がはいっている以上、その場で楽しんでおしまいといった感じだったのではないか。そのため古本市場に出回る部数が少なくなったのではないかと推察する。
さてこのアンソロジーを3冊読んでみて、その豪華執筆陣に驚く。よくもこんな小雑誌にこれだけの執筆陣がそろったものだと思う。この本に収録されているだけでも、大宅壮一、小松左京、都築道夫、吉田健一、荒正人、戸板康二、星新一、獅子文六、安岡章太郎、犬飼美智子、安部公房、檀一雄、北杜夫、大藪春彦、團伊玖磨、伊丹十三、稲垣足穂、淀川長治、田村隆一、吉行淳之介等々の面々である。
これらの人たちのエッセイを読んでいると、確かに戦後10年はたって、テレビ、冷蔵庫、掃除機が普及し始めても、「もはや戦後ではない」と経済白書がいっていても、戦争や戦後を引きずっていると感じた。話の内容が植民地時代の中国や東南アジアであったり、まだ外貨規制があり、なかなかヨーロッパやアメリカに行くことが出来ない時代に、そこへ行った人たちの経験談が多い。たぶんこういうのを読んで、「なるほど今はヨーロッパやアメリカではこうなんだ」とページをめくりながら酒を飲んでいたのだろう。
ただ、このアンソロジーの3巻目の「ウィスキー・ミニ百科」にトリスバーのことを「昭和30年前後に生まれ、爆発的な人気を呼んだ大衆的なハイボールスタンドのこと。今日のウィスキー・ブームを育てた。『やすく、うまい』で、サラリーマンや学生が気軽に入れ、安心してくつろげ、洋酒の飲み方まで教えられる道場だった」と書いてあるを読んで、開高さんが言うように、ドブロク、バクダン、カストリなどいかがわしい酒を飲まされ、しかもぼられ、安心して酒など飲めない、人々の気持ちもささくれたっていた時代から、トリスバーでこの『洋酒天国』を読んで感心し、掲載されているヌードグラビアに驚嘆できるようになったことは、時代が変わりつつあったんだと感じることが出来る。そういう雰囲気を想像しながらこの本を読むと面白いものがある。

グラビアは今の男性週刊誌から見ればおとなしいものだけれど、この折り込みのグラビアがないとクレームがきたという。酒にはつきもののあっち方面のジョークも、今でもクスリと笑わせてくれる。
ところで、この『洋酒天国』を古本屋で探し回っていた頃、面白い本を見つけた。それが『洋酒マメ天国』というやつである。

いわゆる豆本である。写真が実物大だ。この豆本が3冊が1ケースに入っている。

全36巻。中身もお見せしたいのだが、どうも装丁が悪く、大きくページを開くと割れてしまうので、出来ないのが残念である。
奥付を見てみると、昭和42年となっているから、これも40年たっていることになる。これはさすがに無料配布というわけにはいかないらしく、サントリー直営ビアホール、サントリー・チェーンバーに申込書が置いてあったらしく、4セットを1年間で1,200円で配布していたらしい。つまり1冊100円ということだ。なかなかかわいらしく、コレクションとして楽しんでいる。
評価
★★★
書誌
書名:アンソロジ-洋酒天国 1酒と女と青春の巻
著者:開高 健監修
ISBN:9784484300085 (4484300087)
出版社:TBSブリタニカ 1983/12出版
版型:239p 19cm(B6)
販売価:892円(税込) (本体価:850円)
書誌
書名:アンソロジ-洋酒天国 2傑作エッセイ・コントの巻
著者:開高 健監修
ISBN:9784484300092 (4484300095)
出版社:TBSブリタニカ 1983/12出版
版型:219p 19cm(B6)
販売価:892円(税込) (本体価:850円)
書誌
書名:アンソロジ-洋酒天国 3ウイスキ-ここにありの巻
著者:開高 健監修
ISBN:9784484853017 (4484853019)
出版社:TBSブリタニカ 1985/03出版
版型:221p 19cm(B6)
販売価:892円(税込) (本体価:850円)
☆いずれも入手不可のようである。