2007年07月01日
北尾トロ著『ぶらぶらヂンヂン古書の旅 』
今回はトロさんの日本全国古本探しの旅の本である。本の題名である「ぶらぶら」は大した当てもなく、歩き回ることを意味するのだろうとはわかったが、「ぢんぢん」がちょっとわからなかった。あとがきを読んで初めて、古本屋を「歩きまわっているうちに人とも出会うし、予期せぬ体験もできたりする。なにより、いい店を発見し、ほしい本をつかみとる瞬間の、胸がヂンヂンたぎる瞬間がたまらない」とあったので「ぢんぢん」は「じんじんする」ことをいっていたんだとわかった。
トロさんにとって古本屋さんで本を買うことは、自分の副業?のネットの古本屋のセドリも兼ねるので、我々が古本屋さんで本を探すのとはちょっと感じが違う部分があるが、それでも探している本が見つかったり、まったく知らなかった新しい発見があったりしたときの心躍る感覚は同じだろう。気持ちとしてよくわかる。それにわざわざここまで来たのだから、何か成果を出したと思う気持ちは、実際古本屋を歩き回ると確かにそう思う。
そういうのが随所に書かれていて、ふむふむ確かにそうだと思った。これは古本屋で本を探した経験のある人しかわからないかもしれない。だから一定の成果があったとき、「小走りに駅に急ぎ、新宿行きのあずさに乗った。隣の座席に置いた、パンパンにふくらんだデイバックを叩いてみたら、ポンポンといい音がした」と書くトロさんの満足感がよく伝わってくる。
ところでトロさんがやっているネットの古本屋さんは私も度々利用させてもらっている。ネットで自分のほしい本が日本全国の古本屋さんから探せる効率のよさがいい。しかし利用する側はそうしたことを重宝しているけれど、逆にネットの古本屋が広まることの弊害とでもいうのか、そのことが古本屋さんがもっている性格も変えつつあることも書かれていて、ちょっと考えちゃった。
たとえば「市の中心部から距離のあるこの店でに来るのは、クルマに頼らざる得ない。以前はここの在庫に魅力を感じ、そうやって定期的にやってくる客も多かっただろう。ところがインターネットの登場で、ほしい本は自宅で検索、注文までできるようになった。ネットを使えばこの店など比較にならない、膨大な在庫から本を探すことができる。わざわざ時間をかけて、あるかないかわからない本を探しに店まで行く必要はないのだ。その中にはぼくがネットで売っている本だって入っているかもしれない。
立地ではなく、店主の個性でもなく、置いてある本で勝負してきた店はより巨大化・システム化して新しい客を獲得する方法か、店売は見切ってネットで本をさばいていくかの選択を迫られている」と書いている。だから以前ここには古本屋さんがあったはずなのになくなっていたり、お店を訪ねても、明らかに本が動いていないことがわかるお店に何軒か出会う。その一因がネットにあるのではないかとトロさんは考えるのである。
また「ネットの普及が古本価格の均一化を招いているとはよくいわれることだが、実際に地方を訪れてみると、改めて現実を痛感する。相場以上の値段ではないとはわかっていても、遠方から訪ねてきた人間としては、”わざわざここで買う”動機付けがないと手を出しにくい」状況になっているというのだ。古本は新刊書籍とは違い定価がないのだから、本の状態や希少価値、あるいはお店の店主のポリシーなどで、値段がまちまちであるのが、楽しいのだが、それがどこでも同じじゃつまらない。
ネットの古本屋を利用する我々はその便利さだけをありがたく感じるけれど、古本屋さんに限らず、新刊書店の存在感は、トロさんの言うように「その店がもっている磁力といいますか、存在感みたいなものは行ってみないとわからない。空間の濃度もそうだ。ネットでいくらでも本が買える時代、わざわざ足を運ぶ意味はそこだろうとぼくは思う」というのは、その通り!と声を荒げて強く同調しちゃう。
評価
★★★
書誌
書名:ぶらぶらヂンヂン古書の旅
著者:北尾 トロ
ISBN:9784776300342 (4776300346)
出版社:風塵社 (2007-06-30出版)
版型:222p 19cm(B6)
販売価:1,365円(税込) (本体価:1,300円)
- by kmoto
- at 06:36
comments