2007年08月22日

歌野晶著『葉桜の季節に君を想うということ』

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 読んでいて、「あれ、おかしいな」と思った。主人公である成瀬将虎の年齢が、話が進むうちに私が思っていた年齢と食い違ってくるのである。成瀬将虎の歳は若いと勘違いしていたのである。
 勘違いするのも当然のような気がする。というのも成瀬将虎が出会い系の女の子とのセックスをし、フィットネスクラブで身体を鍛え、パソコンスクールの講師をしているのである。しかも後輩にキヨシという奴がいて、受験勉強をしている。そのキヨシにアダルトビデオ貸してやったり、キヨシが同じフィットネスクラブに通う愛子に気があり、病気で休んでいるからというので、一緒に見舞いにつきあったりしている。まして成瀬将虎がハードボイルドを気取って生きているのを読んで、いくらなんでも成瀬将虎が会社を定年退職し、シルバー人材センターで仕事を紹介してもらっている年齢だとは思わなかったのである。キヨシにしたって、六十で会社を退職し、一念発起して定時制高校へ通い、大学受験を目指しているなんて思わなかった。もちろん愛子もおばあちゃんである。
 私がこの年齢に関するだましに気がついたのは、地下鉄で自殺を図ろうとした雨宮さくらが(当然この時も雨宮さくらが若い女性だと思っていた)、通販でインチキ健康食品にだまされ、莫大な借金を背負うことになり、結局その会社のいいなりになった七十歳の女と同一人物じゃないかと思ったところから始まる。しかし年齢が合わない。そして成瀬将虎もまさかおじいちゃんだと思っていなかったので、いくらなんでも七十歳のおばあちゃんに恋心を寄せるのはおかしい。これは一体どうなっているんだと読まされることとなる。
 結局ここに登場する人物はすべて高齢者であることがわかり、事件の種明かしをされる。それが作者の意図なのだろうが、やり方が卑怯である。最初に主人公の年齢を公にせず、読者に主人公が若いと思わせるように、フィットネスクラブに通わせたり、ハードボイルドを気取らせたりするのである。結局実際は登場人物すべてがおじいちゃん、おばあちゃんであることが、この話のトリックなのである。これにはさすが頭に来た。
 どうしてこれが2004年版「このミステリーがすごい」、「本格ミステリーベスト10」の1位なのだろうか?こんな本1位にしちゃまずいだろう。(そもそもこの帯の文句にだまされてこの本を買ってしまったのだ)


評価


書誌
書名:葉桜の季節に君を想うということ
著者:歌野 晶
ISBN:9784167733018 (4167733013)
出版社:文藝春秋 (2007-05-10出版) 文春文庫
版型:477p 15cm(A6)
販売価:660円(税込) (本体価:629円)

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