2007年09月21日
ウンベルト・エーコ著『フーコーの振り子』下
アルデンティ大佐という人物がベルボたちがいる出版社に自費出版の依頼にくる。その本の内容はテンプル騎士団の秘密に関するものであった。アルデンティ大佐はテンプル騎士団のある秘密を発見したのだ。
テンプル騎士団の財産をめぐってフィリップ美王はテンプル騎士団の解体をめざし迫害を加える。迫害を逃れたテンプル騎士団の一部は地下にもぐる。隠れた場所がシャンパーニュ地方のプロヴァンであったとアルデンティ大佐は推理する。
アルデンティ大佐は1894年の地方新聞からエドアール・インゴルフという人物がプロヴァンの中心にあるグランジュ・オ・ディムという館の地下で何かを発見したことを知る。このあたりはあのレンヌ・ル・シャトーの伝説と同じだ。
インゴルフが発見したものが何であったのかアルデンティ大佐は調べ始める。インゴルフの娘がパリに住んでいたことを突き止め、訪ねていく。そこにはインゴルフの書斎が残されており、そこでアルデンティ大佐は一枚の紙切れを発見する。そこには難解な文章が暗号のように書かれており、アルデンティ大佐はそれを次のように解読する。
干し草の荷物から三十六(年後の)
聖ヨハネの(夜に)
白いマント(の騎士[テンプル騎士団]のために)
(ヴァン)ジャンヌ[復讐]のためにプロヴァンの(異端転向者が)
六か所で六が六回
一回につき二十(年)で百二十(年)
これが計画なり
最初の者たちは城に向かうべし
再び[百二十年後に]第二陣はパン(の)連中に合流すべし
再び避難場所へ
再び川向こうのノートル・ダムへ
再びポペリカンの宿へ
再び石へ
偉大な娼婦(の)祭りの前に六回が三回[六六六]
アルデンティ大佐はこれがテンプル騎士団の復讐計画だと解したのであった。ここには六つの任務が書かれたフロチャートで遂行されるべきプログラム(復讐計画)が書かれていて、百二十年ごとに一つの使命を果たすようにそのフロチャートが六カ所に分けられていた。それを次の相手に伝えていくシステムであった。ところがある事情で(暦の改定で)それが次に伝わらなくなり、テンプル騎士団が有する強大なパワーを秘めた計画がわからなくなってしまった。
この本は長々とその計画がどんなもであり、テンプル騎士団が有した強大なパワーとは何かを世界中の本や様々な宗教結社などから得た知識を駆使し、そこから関連情報をカゾボンやベルボたちがさぐっていく。そしてそれらの正体を突き詰めたとき(推理が完成したとき)、テンプル騎士団の亡霊たちがそれを知ろうとする。
しかし、このメモの解釈の仕方ではテンプル騎士団の秘密なんてないものになってしまう。たとえばカゾボンの恋人であるリアはアルデンティ大佐のメモを次のように解読する。
サン・ジャン通りで
干し草用の荷車の一台分の単価は三十六ソルディ
六枚の封印のついた新しい布地は
白いマント通りへ
花飾用の十字軍の赤いバラは
六本ずつ束にしたものを六束、次の場所へ
単価二十ドゥニエなので合計百二十ドゥニエ
配達の順序は
最初の六束は城砦へ
次に同数をパン門地区へ
同、避難教会へ
同、川向こうのノートル・ダム教会へ
同、カタリ派の旧館へ
同、ピエール・ロンドへ
それから、六本の束を三束、祭りの前に娼婦の通りへ
となる。
アルデンティ大佐のメモは、果たして本当にテンプル騎士団のものであったかは疑わしい。あくまでもそれはアルデンティ大佐が解釈したものであって、それが正しいかどうかはまったく別物である。カゾボンたちがたまたまテンプル騎士団に入れ込んでいるところに、アルデンティ大佐がこの情報を持ってきたものだから、こういうことになってしまっただけのことで、解釈の仕方で、テンプル騎士団の秘密にもなり、あるいは「花屋さんの配達伝票みたいなもの」にもなるということなのだ。
そして我々読者はアルデンティ大佐のメモに関する解釈をめぐって、ああでもない、こうでもないと著者のエーコに長々とつきあわされた形になる。それはほとんど理解不能な文章で、これでもかというくらいくどい。しかし最後にリアの解釈を読むと、結局「何だったんだ!」ということになってしまう。よく分からない本であった。この本を面白いという人がいるなら、どこが面白かったのか教えてもらいたいくらいだ。
評価
★(やっぱり評価不能)
書誌
書名:フーコーの振り子〈下〉
著者:ウンベルト・エーコ 藤村 昌昭【訳】
ISBN:9784163137902 (4163137904)
出版社:文芸春秋 (1993-03-05出版)
版型:569p 19cm(B6)
販売価:2,344円(税込) (本体価:2,233円)
入手不可(品切重版未定) 文春文庫ならあるようです。
- by kmoto
- at 05:14
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