2007年10月12日
いまニッポンの文庫はどうなっているのか!
今月の『本の雑誌』の「いまニッポンの文庫はどうなっているのか!」という特集は面白かった。最初の部分は日本の文庫の歴史をうだうだと書いているのだが、結論は「そもそも文庫は古典、名作を安く手軽に読めるように作られた日本オリジナルのペーパーバックである」から、「『今月の新刊』だけではなく、長く読まれる作品を長く売り続けることが文庫版元の使命なのではないか」。それなのに「現実には毎月毎月新刊がばんばん出る一方で、絶版・品切れになっていく文庫も決して少なくない」。その生存率がどんどん落ちていく現状を嘆いている。
この特集にあげられた表をここに示してみると、文庫創刊で華々しく花火を上げ、ラインアップを充実させて発刊したはずなのに、創刊当時の文庫は角川文庫と創元推理文庫にいたっては今は全く手に入らない状況なのである。つまり生存率ゼロなのである。
10年たつとハヤカワ文庫以外5割を超えているのは集英社文庫と創元文庫のみで、15年たって5割をキープしているのはハヤカワ文庫のみ。さらに20年たつと各社10%台で、ハヤカワ文庫の47.4%、岩波文庫38.3%は健闘しているということになる。結論として、欲しいと思う文庫は「刊行から五年以内に買っておかないと半分以上が入手できなくなってしまう」ということなのだ。ハヤカワ文庫は高い数字をキープしており、5年前でも10年前でも刊行された文庫本が100%手に入るという結果だ。だから著者としては作品が長生きさせたかったら、ハヤカワ文庫にラインアップしてもらえばいいということになる。
こんな表を見せられなくたって、だいたいの予想はついた。とにかく品切れになるスピードが早い。簡単に目録から消えていく。ひどいものである。私などこの作品は確か○○文庫にあったはずだと昔得た知識で探してみるが、そのほとんどが手に入らない状況になっているし、自分の持っている文庫などはかなりの部分で目録から抹殺されてしまっている。
だから発売されたら早めに買っておかないと、後で読みたいと思っても手に入らなくなってしまうから、せっせと買いだめしてしまうのだ。これが私が読む本がたくさんあるのに次から次へと新しい本を買ってしまう口実にもなっている。(実際かみさんにもそう言っているのだが、疑いの目で見られている)
まぁ本を売る以上商売なのだから、売れない本をいつまでも作り続ける訳にもいかないのもわからないわけでもない。ここで思い出すのが、出版業界が再販制度反対の理由として、出版物は「文化」なのだから、当然再版制度が維持されなければならないという根拠である。もし出版物が「文化」ならこんなに品切れ・絶版にしていいのかということになるではないか。言っていることとやっていることが明らかに矛盾している。
もう一つこの特集で面白かったのは、「文庫解説が減っている!?」という緊急レポートである。その表もあげてみる。
この表は大手5社の解説比率を対5年比で調べた数字だというが、どういう根拠かよくわからない。けれど単純に数字だけを見てみると、2002年と2007年では解説が減っていることはわかる。文庫解説の原稿料が一枚(原稿用紙のことか?)5,000円から6,000円で上限が10万円である。今どんどん初版の刷り部数が減っていて、初版1万部で800円の文庫に10万円の解説料を払うのはかなりのコスト負担になる。だから経費を削減するために文庫解説を減らして、せめて「訳者あとがき」などでごまかしているらしい。この「訳者あとがき」は翻訳料に含まれるので原稿料なしなんだそうだ。
特に集英社文庫が解説が減っている理由は、集英社独自の文庫解説印税制度のためらしい。これは10万部を超えたものに0.5%印税が文庫解説原稿料とは別に支払われているからで、当然更にコストがかかる。だから著しく文庫の解説が減っているという。
確かに解説は面白い部分もあるから、ないよりあった方がいいが、つまらんことをうだうだ書いているものや、自分の主張をこれでもかというくらいくどくど説明する解説なら、ない方がいい。でも、出版不況が文庫の解説にも及んでいるとは正直驚いた次第だ。
- by kmoto
- at 20:36
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