2008年02月21日
喜国雅彦著『本棚探偵の回想』
『本棚探偵の冒険』の続編。続いて読む。出だしで笑った。「本屋で不器用な店員に、買った本の帯を破られるんじゃないかとヒヤヒヤしたことは誰にもあるよね」という書き出しである。たかが本の帯と言ってしまえばそれまでなのだが、コレクターとしては本の帯も貴重なのである。本の一部なのだ。古本などこの帯があるなしで価格が大きく違ってしまうこともあるのだ。
だからレジに本を差し出す時には店員の本の扱いに神経質になるのはよくわかる。レジ接客していると、私の手元をしっかり見ているお客がいるときがある。多分そのお客は、「おい、その本をぞんざいに扱うなよ!」といった感じで私の手元を見ているのだろう。
しかし、店員は一連の作業をしなければならない。スリップを本から抜いて、カバーをかけたり、袋に入れて会計をする。そのスリップを抜くとき、あるいはカバーや袋詰めをするときに、帯が破れてしまうこともある。時にはとんでもない造本の本があるからやっかいである。函入り本で、その函がきつきつで本が出てこない。しかも本そのものにパラフィン紙がかかっていると、何とか取り出したものの、今度函に納めようとすると必ずパラフィン紙が破れてしまうのだ。
「本体に挟まっているスリップを取るために、函から本体を抜こうとする。抜けない。揺する。出ない、ブンブン振る。泣きたくなる。ゴトン。おい、すみませんの一言は!?スリップを探す。そっちは底だ。背を見て天か地かも判らないのかよ。お前は普段洋書専門かよ。だいたいな、その本はな、五年前からそこの棚に並んでいた本で、とっくに絶版になっていて、今からスリップを戻したって在庫ねぇよ。必要ねぇんだよ。まぁいい、それはそれ、問題は本を函に戻すときだ。パラ(パラフィン紙のこと)をクシャってすんなよ。なるんだよなこれが。絶対になるんだよ。他の店でもこの本はあったんだ。だけど、そこのはすでにクシャクシャだったんだ。客もよ、立ち読みするんじゃねぇよ、高い本を。買いもしないのに中身見るんじゃねぇよ。高い本見るときはな、保証金預けろ。免許証提示だ。あっおばちゃん、そんなに力入れたらダメだよ。ほらずれてるって。何?いいよ、他の客は。『バトル・ロアイアル』どこですかだと?目の前に積んであるだろ。ポップ立ってるだろ。赤い字で『ビートたけし主演・大ヒット公開中』って書いてあんじゃん。探すなよ、ババア。手元に注意しろよ。もういいよ、貸せよ。ほら一万円だ。釣り銭用意しろ。俺がやるよ。函には俺が入れるよ」
書店員も結構大変なことが判るでしょう!こういう本を扱うときはかなり神経を使うのだ。でも自分が客だとそうは言っていられない。やっぱり喜国さんのように言いたくなるのである。
閑話休題
レジで思い出した。昔大手町で公務員を相手にしていたことがある。最初勝手に配本されたエロ文庫を仕方がないので店頭に並べていたのだけれど、これが売れる。だからエロ文庫の新刊を平積みにしていた。公務員はスケベなのだ。で、それをレジに持ってくるのだが、面白いのは必ず他の文庫、たとえばミステリーなどを表にしている。絶対にエロ文庫を表にしない。本当はエロ文庫が読みたくて仕方がないのだけれど、それじゃあまりにもみっともないから、読みもしない本より、読めそうな西村京太郎の文庫本を選び、一緒に持ってくる。魂胆が見え見えなのだ。
私は基本的に公務員が嫌いなので(銀行員も嫌いだ。これは書いたけれど・・・)、文庫二冊を受け取り、下に隠してあるエロ文庫をわざと表にしてレジを打つ。そしてそのエロ文庫からカバーをかける。本当はゆっくりカバーがけしたいところなのだが、そうも言っていられないから普段通りにやる。しかし腹の中ではあんたも好きなのねと思っていた。
さて、喜国さんの本に戻る。この本や先の本を読んでいると、古本に限定せずとも本という<物体>は読むことに限らず他に楽しむというか遊べることが出来ることを知る。
たとえば喜国さんは前回、早川書房のポケットミステリを一日どれほど集められるかということをしている。ただこれは購入するのではなく、今まで出版されているポケミスを古本屋だけでなく新刊書店でチェックして、全巻集めてみる。
又は自分で欠けている本の函をオリジナルで作ってみたり、豆本を作ってみたりする。あるいは自分で集めた本から出版社を問わないアンソロジーを作ってみたり、オリジナルカバーまで自分で作り統一感を出してみたりする。
さらにミステリーグッズとしてミステリー本の表紙をトレカにしてみたり、探偵小説のTシャツを作ってみたり、結構まめなのである。さすがここまでして本と遊びたいとは私は思わないけれど、面白いとは思う。
その上ゲーム感覚で、神保町から水道橋の古本屋、新刊書店を一軒一軒巡ってみたり、新刊書店が危機に瀕しているから、五万円投資して、本を買いに出かけたり、いろいろとやってくれている。
そんな中、喜国さんがブックオフにあまりいい感情を持っていないことがそれとなくわかってくる。ブックオフが、持ち込まれた本をきれいか汚いかだけで判断し、同じ値付けがされ、汚い本は捨てられ、残った本は磨かれ店頭に並べられることが気に入らないらしい。確かにそうである。ブックオフにいる店員に古本の本当の付加価値などわかるわけがないから、それは仕方がないだろう。
それと「本が好きだから、本を邪険に出来ないから、捨てることが出来ないから」、あるいは「捨ててゴミになるなら誰かの元に言ってほしい」という気持ちから新古書店に売りに行く。そこに環境問題も絡んでくる。この本好きの微妙な感情を利用してブックオフは成り立っているというのが気に入らないらしい。
まぁそれほど込み入った感情でブックオフに本を売りに行く訳じゃなかろうが、捨てられないし、捨てるなら、多少でも現金か出来るなら、近所にあるブックオフに持っていこうというところじゃないかなと思う。
ブックオフに関しては賛否両論あるが、私はかなり利用しているので、その存在価値にとやかく言うことは出来ない。だからここでやめておく。
評価
★★★
書誌
書名:本棚探偵の回想
著者:喜国 雅彦
ISBN:9784575713381 (4575713384)
出版社:双葉社 (2007-10-20出版) 双葉文庫
版型:493p 15cm(A6)
販売価:859円(税込) (本体価:819円)
- by kmoto
- at 20:53
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