2008年02月15日
喜国雅彦著『本棚探偵の冒険』
この本は東京堂の本店はす向かいにあるふくろう店で見かけた。そのときはこの著者のことも全く知らないので、書名は気になっていたが、とりあえず買うのを控えた。でも古本や本棚に関するエッセイは個人的にどうしても気にかかる。で、後日他の本屋さんで探し求めたが、この後読む続編はあるのだが、この本は棚に並んでいなかった。何件か書店を回ったがやはり同じであった。仕方がないのでここのところお世話になっているアマゾンでこの本と続編を注文する。(ほんとこのままでいると、書店では本を買わなくなりそうだ)
それでこの本を読んで喜国さんがギャグ漫画家であり、奥様も同じ漫画家の国樹由香さんとのことを知る。喜国さんは「横溝正史の絶版文庫を集めるために古書店通いをしているうちに、いつしか古書が人生最大の趣味になった」人で、なにせカーナビに数多く古本屋さんの所在地を登録している人なのだ。主に古い探偵小説や怪奇小説などを集めているという。
そして変わっているなと思うところは、それを納める本棚にこだわりを持っていることである。つまり本が入ればいいというのではなく、きれいにそれら古本が収まっていないと気が済まないのだ。ネットで「潜入!本棚探偵の凄い本棚」というサイトがあるのだが、それを見てみると、なるほど確かに美しい。
http://media.excite.co.jp/book/interview/200412/
index.html
http://www.kunikikuni.com/index.f.html
さすが友人の本棚の整理を買って出るだけあって、本棚にはこだわりを持っている。新たに購入した古本を本棚納めるために、それまできれいに美しく並んだ本を棚ごと移動させるというこだわりなのだ。さらに市販の本棚は読書家が作ったものじゃないから、棚一杯にきれいに収まらず、上部に大きなスペース出来てしまう。だから美しい自分で本棚を作るという始末。函がなくなってしまって価値の下がった古本を自分でオリジナルの函を作って棚に収めてしまうところまでやるのだ。几帳面というより多少病的な部分も感じないわけでもないが、まぁ古本が好きな人は案外こうした病的な部分を持ち合わせているような気がする。
じゃあ自分はどうなんだと振り返っちゃうと、私は古本も集めはするが、そこまで本棚に収納することにこだわっていない。実際今は、本棚の整理をしないものだから、本棚から取り出し読んだ本を元の場所に収めず、棚に積み上げているし、そこの新たに購入した本も同様に積んだままになっている。要は“ずぼら”なのだ。
喜国さんの本棚の整理方法で参考になったことがある。私の本棚も大工さんに任せて作ったものだから、ぴったりと本が収まらず、上部にかなりの隙間が出来る。しかも棚がダボで上下出来るのだが、そのダボ穴の間隔が結構広く取ってあるものだから、細かい調整が出来ない。奥行きもそれなりにあるため、文庫などは二列に並べている。これだと奥にある本は全く見えない。しかも上部は本を横にして収納してある。
喜国さんの本の整理の仕方は、まず奥の本を見えるように、上部に横積みするのではなく下に横にして、高くしてその上に文庫を並べれば奥にある文庫も見えるというのだ。む~ん、確かにそうだ。その下敷きになる本はしょうもない本や読んで絶対に再読しない本を犠牲にする。これはいいかもと思った次第で、今度やってみようかなと思っている。
さて、私は本は読むものだけのものじゃないと思っている。もちろん読むことが最優先だけど、読まなくてもその本を持っているということだけで満足できるものもあると思う。その本を眺めているだけで楽しい。読むとはなしに古本を手にとって、眺め、ページをぱらぱらめくるだけでも、至福の時を感じてしまうことがある。
古本自体、時代の荒波にもまれ、生き残ってきただけに、それだけで希少価値がある。古びてても、多少かび臭くても、それが古本の価値を高めるものじゃないかなんて思うのだ。
今はネットでかなり楽に古本を手に入れることが出来るが、ちょっと前までは、自分で神保町や早稲田界隈の古本屋さんを歩いて捜し回った。それだけ労力と時間をかけて探して見つけ出した本だけに余計に愛着を感じてしまう。
この本ではよく“タイムマシーンがあれば”という文句が出てくる。つまり現在ある古本が発売当時の何十倍、いやそれ以上の値段がついていること、あるいは探している本がなかなか見つからないから、当時にさかのぼって買いに出かけたいという気持なのだが、はたしてそれがいいかというとそうでもないんじゃないかと思うのだ。
古本は時間をかけて探し回ることに価値がある。つまりたとえば好きな作家の本を古本屋で集め始めると、最初は結構集まる。しかしすべてが集まるかといえばそうでもない。なかなか手に入らない本は、やっぱりそう簡単に見つからない。それこそ何年越しで集めるものなのだ。そして探している本があったときの感動は言葉で言い表せない。私も古本集めをしていた頃そんな感動を味わったことがある。本当にうれしいものなのだ。そしてやっと見つけた本はだいたいが値段が高い。なぜならその本は古本市場で入手しにくいものだから値が張るのだ。全集などの入手しにくい巻をキキメという。そこでこの本が欲しいのだが、値段を見て驚き、買うかどうか悩み、意を決して購入する。もうそれは宝物なのだ。(やっぱり私も危ない世界にちょっと顔を突っ込んでいるかもしれない)
それがわかるから、喜国さんが自分が欲しい本を必死になって探す気持がよくわかる。うんうんそうだよねなんて思っちゃうわけだ。そういういきさつが古本に関するエッセイには書かれているものだから、私は好きなのだ。
そして欲しい本が集まってくると、古本探しもだんだんなくなってくる。好きな作家の本を探し求めているときは楽しいのだが、それ以外の作家に興味が移らないのだ。私もそうであった。だから古本屋街を歩くことをやめたのだ。しかし喜国さんは「選別貴族本」といって専門店で値の高い本に移っていく。そしてこの世に一つしかない「生原稿」に手を出した。
ところがこれがちょっと怪しい代物で、本物か偽物かいろいろと情報を得て自ら調べていくのだが、どうも偽物っぽいのだ。そのときの衝撃を次のように言う。「美女が化粧を落としたら別人だったどころじゃない。パンツを脱がしたらチンコが生えていたぐらいの衝撃だ」と。大笑いしてしまった。さすがギャグ漫画を生業としているだけのことがある。
評価
★★★
書誌
書名:本棚探偵の冒険
著者:喜国 雅彦
ISBN:9784575712902 (4575712906)
出版社:双葉社 2005/01出版 双葉文庫
版型:453p 15cm(A6)
販売価:800円(税込) (本体価:762円)
- by kmoto
- at 17:26
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