2008年02月27日

中小書店はダムだ!

 昨日の朝日新聞の文化欄に「草思社支援に書店の輪 業界の悪循環は今もなお」とあった。そう草思社もつぶれちゃったのだ。結構面白い本を出していて、私も何冊か草思社の本を持っている。
 ここのところ書店組合から倒産した出版社があると、緊急のFAXが届くことが多い。通常このFAXを見た組合員の書店は「やばいぞ!早く返品しなきゃ」とあわてる。その姿が目に浮かぶ。
 正直なところ「おいおい頼むよ!」とまずは自分のところの在庫が不良在庫にならないようにすることが精一杯なのだが、今回草思社の場合、たとえばジュンク堂書店の池袋本店では、約500点を並べた「草思社再建支援フェア」のコーナーを設けている。ティーエス流通協同組合(東京都千代田区)も、草思社の書籍30点をセットにし、都内の加盟店約150店から注文を募った。更に東北や関東、近畿の中小18店の共同仕入れを手がける「志夢ネット」(同文京区)も加盟店がフェアを開催中だという。つまりみんな草思社の再建に一役買って出ているのだ。それは大手書店中心の配本が進むなか、「中小にも商品を供給してくれた草思社の恩義に報いたい」ということらしいのだが、まぁ草思社が出版最大手じゃないけれども、しっかりした本を出版してきた経緯がそうさせてるんじゃないかななんて思う
 ところで私が興味があるのは、何で草思社がつぶれちゃったのかということである。この記事はその点が興味深かった。出版業界に詳しい(この○○業界に詳しいというフレーズほど胡散臭いものはないと思うのだが・・・)フリーライターの永江朗さんの話が「なるほど!」と思ったのである。
 「出版年鑑2007」によると06年は出版点数は77,417点。90年に比べて倍増したが、販売額は2割増の1兆4,904億円にとどまっている。出版社は新刊を出すと取次から前払い金が入るが、返本が(2007年の返品率は金額レベル39.4%)多いと最終的に過払いが発生し、それを埋めるためにもまた新刊を出す。 つまり問屋からお金が入るんじゃなくて、逆にお金を取られる可能性もあるから、そうならないように更に新刊を出してとりあえずプラスにするわけだ。要するに自転車操業だね。草思社の新刊も90年代前半は50点前後だったが、昨年度は過去最多の108点にまで急増したという。
 どうしてこうも返品率が高いかというと、もともとこの業界の返品率の高さは異常だったのだが、書店がこうもせっせと返品に励むのは早めに返本して、仕入れの資金を回収する動きに拍車がかかっているからである。生き残るためにやむを得ないのだ。実際90年代半ばに約2万3000店あった書店が現在は約1万7000店に激減している。
 そしてこの記事には書いてないけれど、この書店の激減が、お店に本がばらまけなくなってしまい、結局既存店に配本を依存せざるを得ない状況になり、既存店は既存店で資金繰りのため返品に励むから、どうにもならない。書店の激減はおそらく刷り部数の減少にも影響しているんじゃないかなんて思うのだ。
 90年代半ばに約2万3000店の書店があったときは、少なくとも新刊が今よりも書店にとどまっている時間があったことになるわけだし、とどまっている時間が長ければ長いほどお客の目にとまり、売れる可能性だってかなりあったはずだ。つまり永江朗さんがいうように「書店はその間、本を蓄えるダムのような役割を持っていた。だが今は、その余裕がなくなってきている」 のはそういうことなのだ。
 その上今は余計な在庫を持つなど大名商売なんかしていられない時代である。適正仕入という名のもとで、きつきつの仕入をする。そのためにコンピューター管理を徹底する。余分な分は即返品だ。売れなきゃ即返品なのだ。それでなくても出版点数ばかり増えるのだから、そうせざる得ない。
 草思社の前につぶれちゃったエックスメディアというパソコンのマニュアル本を出していた出版社なんか、自分のところの経営状態が悪化したものだから、在庫を書店に置いてもらおうとして、営業が書店回りして、「いつでも返品を取りますから、置いて下さい」と自社の本を書店に押しつけてつぶれちゃった。そのため返品できなくなって書店のおやじが怒ったくらいなのだ。
 どの業界でも寡占化するのはこういう経済状況下ではやむを得ないのだろうが、あまり中小書店をいじめていると、出版社や問屋、あるいは大書店だって自分のところの首を絞めることになることを自覚すべきなのではないかと思うのだ。

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