2008年03月21日
阿刀田高著『怪談』
ちょっと阿刀田さんの作品は休憩しようと思ったのだが、どうも気にかかるので読むのを再開する。それにしてもかなりのボリュームのある本だ。最初読み切れるかなという不安があったが、結構ページが進んだ。ページが進んだといってもちょっとイライラしながら読んだという感じだ。詳しいことはおいおい書く。
物語は、警備員のアルバイトをしながらボランティアで小説の朗読をやっている朝倉恒一は、NHKでラフカディオ・ハーンの怪談を読んでいた。そんなときスタジオにハーンの勉強をしているという日枝田洋子が訪ねてくる。
雑司ヶ谷にあるハーンのお墓で再会し、以後お互いがハーンに興味を覚えていることを知り、ハーンゆかりの地を二人で訪ねていく。
まずは東京にあるハーンのゆかりの地から、次に焼津、明治村のある犬山、出雲、そしてハーンが日本に来る前に愛した土地であるカリブ海のマルチニークと二人で訪ね歩く。最初は“散歩学”と称して、次に日帰り旅行の“小さな旅”、そして本格的な旅と二人は続けていく。
旅が本格的になっていくと、恒一は洋子に対して気持が好意から恋愛感情へと変わっていく。しかし洋子にはどこか不思議な部分があって、恒一にははかりきれない。そのため思うような行動がとれない。それが妙に焦れったくて、読んでいておいおいしっかりしろよと思いつつ、いつ恒一は洋子に対して自分の気持ちを伝え、成就させるのかと、“次こそは”と半ば期待しつつ、ページをめくることとなった。それがイライラして読んでということなのだ。
一方ハーンゆかりの地を歩くためには当然下調べが必要になってくるのだが、それがハーンの詳しい解説となっている。私はラフカディオ・ハーンこと小泉八雲のことをあまり知らなかったので、結構面白く読ませてもらった感じである。そして私もハーンに興味を持ってしまった。
私が知っている小泉八雲は日本の怪談を集めた人という程度の知識しかないのだが、それはハーンがアイルランド人のチャールズ・ブッシュ・ハーンを父とし、母がローザ・アントニア・カシマチがギリシア人であることに関係があるんじゃないかということで興味を持ってしまった。なぜならハーンの父親はケルト神話のアイルランド人、母親はギリシア神話の土地の人である。親二人がそういう土地の人だったから、ギリシアで生まれたハーンはそういう昔の話が遠い記憶として無意識のうちにあったのではないかと思えてきたのである。それは“血の記憶”として見たこともないし、行ったこともないのにハーンのどこかに記憶として伝承されたものであり、それが日本の昔話を身近に感じさせ、共感を覚え、のめり込んでいったのではないかと思えたのだ。
そして恒一にも洋子にもそうした“血の記憶”というべきものを深く感じる部分があって、それがハーンに結びついたのだろう。更に言わせてもらえば、もしかしたらだれでも昔から受け継いできたものが、無意識のうちに物語や記憶としてあって、何かその人に作用するものがあるんじゃないかなんて思ったりした。それが“血の記憶”というもので、科学や常識では説明できない。あるいは昔話や伝承というものはそういう“血の記憶”で成り立っているのかもしれないと思ったのだ。それをハーンの生い立ちや功績、あるいは恒一や洋子の行動に感じたのである。
評価
★★★
書誌
書名:怪談
著者:阿刀田 高
ISBN:9784344400894 (4344400895)
出版社:幻冬舎 (2001-04-25出版) 幻冬舎文庫
版型:765p 15cm(A6)
販売価:入手不可
- by kmoto
- at 17:51
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