2008年03月09日
阿刀田高著『雨降りお月さん』
さすがにこれだけ阿刀田さんのエッセイを読んでくると、鼻につき始めてきた。そろそろ一休みしていい頃かもしれない。でも後一冊エッセイが残っているので、これを読んで一休みする予定だ。
今回のエッセイは先の本とは違い、それまでの感じに戻っている。個人的にはこの方が好きである。
「お金儲け考」というエッセイで、阿刀田さんのところに「お金を儲けさせてあげましょう」という電話があるという話なのだが、要するに投資の話を持ちかける勧誘の電話のことだ。そんな電話には「お金儲けには興味がないので」と応えるという。もちろん世の中には金儲け興味のない人などいるわけがないし、阿刀田さん自身もお金は好きだと言っている。
だけど、お金を増やすやり方が自分が持っているポリシーとあわないから、そう答えることにしているというのだ。阿刀田さんは言う。「お金儲けというものは、自分で頭を働かせるか、体を動かすか、なにかしら労力を支払って、はじめて可能のことである。私はかたくなにそう信じている」と。
こういう考え方をする人は個人的に好きなのだ。確かに投資という手段でお金を増やす方法は否定はしないけれど、他人にお金だけを預けて、自分はそれ以外何もしないというやり方が私も気に入らないところがある。もちろんそれなりにリスクも負っているんだと言われそうだけれど、やはり自分が得るお金は自分の汗が伴わないとまずいんじゃないかと個人的に思う。何を青臭いことを言っているんだと言われても、そう思うのだから、仕方がない。
ちょっと前に投資ファンドの代表が「金儲けは悪いことですか」とインタビューしているマスコミに逆に問いかけていたのを思い出すが、あの人がたたかれたのは、あからさまにそれを言ってしまったことだと思っている。正当な手段、あるいは合法的な金儲けが悪い訳がない。ただ世の中の大半が自分で汗をかいて、人生をすり減らして、金銭を得ている以上、あの人のやり方はどこか受け入れがたい部分がある。そう思う。あの代表の言い方は、どこか苦労してお金を得たきたことを否定するところを感じてしまうのだ。
お金に対する考え方の相違だからどうしようもないけれど、私も汗とお金は結びついているものと思っているから、阿刀田さんの考えにいたく同調するのである。
それと多少関係あるかもしれないが、「酔いをめぐって」で、「このごろのカレンダーは、日曜日から一週間が始まっている。あれは気に入らない。初めに休んで、それから働く。そういう思想」が阿刀田さんは嫌いだという。私もそうだ。やはり一週間は月曜日から始まり、土曜日まで働き(最近は週休二日だから金曜日まで働き)、そして休むというのが個人的にしっくりくる。カレンダーのデザイン上そうせざるを得ないのかよくわからないけれど、やっぱり一週間は月曜から始まって欲しい。まずは働き、そのご褒美というか、お疲れさんという意味で土日の休みが意味をなすと考えるのが普通じゃないかと思うのだ。休みから始まって、それから働けというのはどうも納得できない。
最近のカレンダーの表記には、先の投資の話とどこか似ているように思えてならないのは私だけであろうか?おそらく大半の人たちが働くことでお金を得て、そして休むというのが、普通なのではないかと思うのだ。
阿刀田さんがそうして小市民的な視線を持っておられるところに、共感を覚えるし、だからこそ作品を読んでみたいと思うのではないかと考える。
最後にここのところ阿刀田さんのエッセイを立て続けに読んでいるのだけれど、どの文庫にも最後に阿刀田さんの作品目録が内容ごとに細かく表記されている。最初はこれは便利だなと思っていて、出版社の親切からこうした文献目録を載せてくれていると思っていた。ところがそうじゃないらしい。
阿刀田さんは様々なジャンルの作品を書かれている。だから読者が阿刀田さんのミステリーを期待して読んでいたのが、いつまでも殺人が起こらないという不満が出てくる。そうならないように一計を案じ、各社で発行する文庫本すべてに分類目録つけることにしたらしい。多彩な才能を持っているとこういう問題が出てくるんだと思った次第だ。
評価
★★
書誌
書名:雨降りお月さん
著者:阿刀田 高
ISBN:9784122016422 (4122016428)
出版社:中央公論社 (1989-09-10出版) 中公文庫
版型:241p 15cm(A6)
販売価:入手不可
- by kmoto
- at 06:57
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