2008年04月02日

大沢在昌著『魔物』下

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 シベリアの町、ケジュマにあるロシア正教会に以前飾られていたイコンがあった。イコンに描かれていたのは聖人カシアンであった。通常イコンに描かれるのは、イエスやマリア、あるいは聖人であった。カシアンは聖人に列せられながらも、イエスに仕えていたのを自ら裏切ったということで地獄に追いやられた。ただ四年に一度、二月二十九日にカシアンはイコンから抜け出して、心に強い憎しみを秘める人間に取り憑き、その者の欲望を満たす力を与える魔物だと信じられているという。イコンはその伝説ゆえ、長きにわたって封じられていたのだ。
 そしてそれを知った司祭は、二月二十九日がくる前に、海の底へそのイコンを沈めてもらおうと、友人でった麻薬の運び屋に頼んだのだが、その友人は違う運び屋に殺され、カシアンはその運び屋に取り憑き、日本に来た。
 北海道の麻薬取締官大塚は、ロシアと地元やくざとの麻薬取引があるという情報得る。万全の態勢で大塚たちは臨んだが、ブツは押収したものの、麻薬の運び屋であるロシア人を取り逃がしてしまう。ロシア人は、銃撃による重傷を負いながらも、あり得ない力で警官数名を素手で殺害し、町へ消えてしまった。
 そしてカシアンはそのロシア人から日本のやくざに乗り移り、今度はそのやくざが自らの恨みを晴らすために、自分の組の幹部を襲う。そして大塚が憎み続けた、飯田に乗り移る。
 これ以上書いてしまうと、ネタバレになるので、書けないが、ただ上巻を読んでいて、たぶんカシアンは飯田に取り憑くだろうなと予想できちゃった。できれば、そうでないことを期待したのだが、やはり話は安易な方向へ展開する。

 私は上巻のときにも書いたけれど、伝説という非現実的なものを持ち込んじゃうと、リアル感に欠けてしまうので、そんなことはあり得ないと読んでいて頭の中に残ってしまい、素直にこの話を楽しめなかった。実際の話、エンターテイメントとして楽しめばいいのだろうが、それが出来ずに読み終えることとなってしまった。作り話として楽しむことが出来ない自分が、融通が利かないというか、頭が固いというのか、とにかく現実的じゃなくてもこの話を楽しめばいいじゃん思うのだけれど、それが出来なかった。
 でも、どうであれ、カシアンをまたイコンに封じ込めようとする、大塚たちの活躍は、ハラハラドキドキしながら読んだ。また大塚たちとやくざの幹部のやりとりは迫力があったし、かっこよくもあったので、何とかこの話を陳腐にせずに済んだんじゃなかろうかと思う。まぁそのため下巻は盛り返した感じだ。


評価
★★★


書誌
書名:魔物〈下〉
著者:大沢 在昌
ISBN:9784048737685 (4048737686)
出版社:角川書店 (2007-11-30出版)
版型:326p 19cm(B6)
販売価:1,680円(税込) (本体価:1,600円)

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