2008年04月04日

秦建日子著『推理小説』

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 この本のことを書くと間違いなくネタバレになるので、以下読まれる方は、ご了承を願います。
 
 『推理小説』という小説がまずあって、一方その話に沿って連続殺人事件が起こる。つまり『推理小説』の著者が連続殺人の犯人であることなる。ただこの本は『推理小説』という小説の内容の記述と、それと同じ内容の殺人事件が同時に展開され、交錯し、少々読みづらい部分がある。

 殺人事件が起こるたびに、『推理小説』の原稿が出版社や警察に送られてくる。小説の内容が殺人事件と同じなので当然注目され、話題を呼ぶこととなる。『推理小説』の著者はこの原稿を買い取れと注文してくる。
 ところでこの本の著者である秦さんは、『推理小説』の著者が以前に出版社に原稿を投稿したが、編集者に「展開がアンフェア」、「動機にリアリティがない」と言われ、その原稿はボツとなった経緯のある人物と設定している。ということは、『推理小説』の著者が犯人である以上、連続殺人の犯人は、以前原稿をボツにされた人物ということになる。では本当にその人物が犯人なのか。たぶんそれはないだろうと予想できた。それじゃあまりにも安易すぎる。
 殺人事件が起こっても、マスコミや興味本位で事件を眺める大衆は、事件が他人事であるが故に、正義や人間性を白々しく掲げられる。それが自分自身に関係のないことだけに、冷静に語れるのだ。そしてそれがいかにアンフェアであるか。しかしそれが現実である。リアリティなのだ。
 『推理小説』の本当の著者は、それを証明しようとした。ここまでくればそれを証明しようとした人物は、「展開がアンフェア」、「動機にリアリティがない」と言った人物となる。そしてその人物が『推理小説』を書いたことになる。

 刑事雪平夏見は地道な捜査方法で、犯人を特定するが、なぜ彼が犯人なのか、そう確信する過程は一切書かれていない。ただ、誰が『推理小説』を書いたのか?疑わしき登場人物を一人ずつ消去していくと、読む側は犯人に行きつく。そういう設定だけ。従ってこの本自体も「展開がアンフェア」である。「動機にリアリティがない」とまではいかないけれど、はっきりとしない。かろうじて雪平夏見と編集者の人物像がこの本の救っている。そして事件が劇場型なので、テレビドラマにしやすい感じがする。そういえばこの著者の経歴を見ると劇作家、演出家、シナリオライターとあるから、こんな感じになったのだろう。
 謎解きがしたかったのか、それとも刑事雪平夏見を売り出したかったのか、その点がはっきりしない。やるならもう少しスマートに、かっこよく(あるいは泥臭く)やって欲しかったなぁと思った。


評価
★★
 

書誌
書名:推理小説
著者:秦 建日子
ISBN:9784309407760 (4309407765)
出版社:河出書房新社 (2005-12-30出版) 河出文庫
版型:317p 15cm(A6)
販売価:619円(税込) (本体価:590円)

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