2008年09月12日
池谷伊佐夫著『古本蟲がゆく』
ここのところ明治という時代にかかりっきりになっているので、ちょっと一休みである。
この本は、先日書泉さんに行ったとき見かけ、気になってしまった本である。私は古本に関する本が好きで、どうしても読みたくなってしまう。著者はイラストレーターで古本好きという人。全国の古本屋さん、古本市を訪ね、最後におまけみたいな感じで、イギリスの古本屋街のチャリング・クロスにある古本屋さんのお店の模様が描かれる。
池谷さんはそれぞれの古本屋さんでお店のスケッチをして、それを元にイラストとしてこの本に掲載する。もちろんスケッチが終われば、古本あさりをする。
このイラストは今時のパソコンで描くものでないだけに、手書きのあたたかさがあっていい感じだ。しかも丁寧に描かれている。おそらく一枚描くのにかなりの時間を要するだろう。これだけ詳細に描くのだから、その元になるスケッチも同様に細部まで見逃さず描かれるのだろうと思う。この本のカバーや、最後のページにスケッチブックに描いたお店の絵があるのを見ても、細かく描かれているのがわかる。
以前読んだ北尾トロさんの全国古本屋さん巡りの時もそうだったけれど、地方の古本屋さんを訪ねてみたいといつも思う。今回も池谷さんの古本屋さん巡りを「いいなぁ!」と思いつつ読んだ。いつもブックオフじゃ、なんだかさびしい。きっと地方の古本屋さんには、お宝があるんだろうなと思うのだ。
もう自分の本棚に本が収納できないくらい本があふれているのに、まだ面白い本があるんじゃないのかなんて思う。ネットの古本屋さんやアマゾンで古本を簡単に買うことができる時代だけれど、やっぱり古本屋さんの店頭で本を眺めたい。そして買ったお宝をじっくりと味わいたい。
池谷さんはきっとイラストを描きながら、むふふなんて楽しんでいるんだろうな。お宝を探し得た喜びをかみしめているんだろうなと思う。その紹介されているお宝本を見ると、世の中には本当にたくさんのジャンルの本があり、無名の、というより私の知らない著者が数多くいて、知らない出版社から本が出されているんだなと感じた。その奥行きの広さは、まさに無限大という感じだ。
この本の最後の方に「古本蟲の生態」というイラストがある。あなたは古本蟲に変身していませんかとその生態いや傾向をいっているのだが、それを見るとちょっと笑ってしまった。確かにそういう傾向あるよなと自分の姿を思いやる。たとえば「床の上に本を積み始めるとどんどん増殖する」とか、「いつか役立つだろうと置いてある本は“期限切れの薬”」とか「老後にでも読もうと、本を買い集めているうちに、死ぬまでに読み切れないほどの本がたまってしまった」など、こんな状態になっている人は古本蟲に毒されているという。確かに!
最後に笑ったのが、「本の価値を値段より(自分の本棚の)スペースで判断するようになる」大笑いした。イラストには古本屋の本棚に立って本を持って考えているが人物が「買えるけどムリして置く本じゃないナ」と思うところが描かれている。
ところで池谷さんは「持っていたい本と、読みたい本は違う。読みたい本は文庫か図書館、クラフトマンシップの感じられる本は、持っていることに意味がある。本は単なるテキストではなく、物としての側面もあり、美しいもの、ユニークなものに惹かれる私は、当然本にも同様の念を抱いている」と書いている。
思わずうまいなと感じたのは、「持っていたい本」という文句である。私も池谷さんの意見に賛成で、本には読む本と持っていたい本があると思っている。もちろん持っていたい本を読んでも一向に構わないのだけれど、読まなくても、本を手にし、ページをパラパラめくりながら眺めているだけで楽しくなる本もある。それは装丁のユニークさや、挿絵や図柄、イラスト、写真の美しささがそうさせるのだと思いたいが、そんな本を私は数多く持っている。あるいは話の内容のユニークさが際立っているものもある。
私はこのブログで、読んできた本のことをああでもない、こうでもないと書きつづっているが、それ以外に持っているだけで楽しくなる本がここに紹介出来ないかといつも考えてきた。しかしこれは本当に私の主観によるものなので、それをやることに意味がないじゃないかとも言われそうだと躊躇してしまう部分もある。あるいは変な自慢話に取られるんじゃないかと思う部分もある。だからなかなか実行に移せないでいるのだが、よく考えてみれば、読んだ本のことを書いていること自体、自分勝手で好きにやっているわけだから、それはそれでいいのかななんて思うようになってきた。ちょっと実験的にやってみて、どんな感じか試してみようなんてこの池谷さんのイラスト見て思った次第である。
評価
★★★
書誌
書名:古本蟲がゆく ―神保町からチャリング・クロス街まで
著者:池谷 伊佐夫
ISBN:9784163704906
出版社:文藝春秋 (2008/08 出版)
版型:269p 22cm(A5)
販売価:2,299円 (税込)
- by kmoto
- at 09:31
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