2008年10月01日

YOMIURI PC編集部編『パソコンは日本語をどう変えたか』

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 私はWindows Vistaが搭載されたノートパソコンを使ってこのブログの文章を書いているが、最初Vistaの画面の文字を見たとき「あれっ、なんか違うな?」と感じた。普段フォントなどあまり気にしない方なのだが、そんな私でもそんなことを感じた。
 Vistaのシステムフォントを“メイリオ”ということをはじめて知った。私は知らなかったが、このフォントはVista発売前から結構話題になったらしい。“メイリオ”の語源は「明瞭」からきているらしいが、その語源の通り、確かにXPの文字よりスッキリしているかもしれない。そのねらいは①ディスプレイ上(特に液晶ディスプレイに)での可読性向上、②和文と欧文を違和感なく調和させるということにあるらしい。
 ところで漢字をコンピューター上で扱えるようにするためには、一定の数の漢字に番号を振ってソフトに組み込まなければならない。この組み込まれた文字の集合体を「文字セット」といい、多くはJISの文字コードを基準にしている。Vistaは「JIS X 0213:2004」(通称「JIS2004」)という文字コードを使っている。
 ところがVista以前のバージョン、例えばXPでは「90JIS」が組み込まれていて、ここで問題が生じるらしい。下の文字を見てほしい。「かつしかく」を漢字変換すると、上がXPの場合、下がVistaの場合である。違いがわかるであろうか?


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 XPは「ヒカツ」であり、Vistaは「人カツ」なのである。それをこの本で知ったとき、実際試してみて「へぇ~、そうなんだ!」としげしげとその文字を見てしまった。
 これは大したことじゃないと思われるかもしれないけど、搭載している文字コードの違いがあるということは結構問題なのである。だって双方名前なのだから当然こだわりがあるはずで、いい加減に済ませられる問題じゃない。
 さらにVistaの「JIS2004」の文字コードにはあまり日常生活では使われない第3、第4水準の漢字が収録されているが、XPの「90JIS」はそれが収録されていない。もしVistaで第3、第4水準の漢字を使って、例えばメールなどした場合、XPでは文字化けしてしまうのである。今のところ混乱がないのは、Vistaがまだそれほど普及していなし、そもそも第3、第4水準の漢字が日常生活であまり使われることのない漢字だからであるが、固有名詞にはこの第3、第4水準の漢字が使われる可能性が充分あるので、ネットの取引など支障をきたすおそれがあるという。

 アメリカ生まれのコンピューターはアルファベットしか扱えない。しかし日本でコンピューターを使うためにはどうしても漢字が使えないとその普及は進まない。当然である。しかしコンピューターで漢字が扱えるとなると、大変なシステムが必要になるし、ソフトも複雑になる。
 例えば英語の場合、基本的な文字数はアルファベット26文字と数字と記号だけで100字あれば事足りるし、しかもアルファベットは漢字に比べれば字形が単純だ。ところが日本語の場合、ひらがな、カタカナ、それにいくあるかわからない漢字を扱わないとならない。しかも字形が複雑ときている。さらに同音異義語が日本語にはたくさんある。それらの問題をどうやってクリアーして、パソコンに日本語変換を組み込んでいったかを、その歴史をこの本では書かれている。
 昔、日経新聞から出版された『パソコン革命の旗手たち』という本を楽しく読ませてもらった記憶があるが、まさにそれを日本語変換ということに限って再現した感じだ。
 ところでこの本の題名である「パソコンは日本語をどう変えていったか」が、私としては一番興味のあることがらである。この本ではこのことが最後の章にわずかしか書かれていないのは残念である。
 ここではパソコンで簡単に漢字変換できることが「きちんと漢字を使えない人が増えた」、「難しい漢字は読めるが、『手で』書けない」という状況を生み出したと指摘しているが、それは今までいわれてきたことだし、自分自身もそう感じているから、目新しいことではない。
 パソコンで簡単に漢字に変換してくれるものだから、個人のブログなど見ていると、時に、普段絶対に使わない漢字が使われていることに気がつく。あるいは個人の手記などまとめた本など読んでいると、多分パソコンで原稿を書いたのだろう。「ここでこんな難しい漢字を使うか?」と疑問に思うことがある。これらすべて、日本語変換ソフトの「お節介」から生じたことだろう。
 私はこのブログでよく本の中の文章を引用する。それをそのままパソコンに入力して、変換すると、本の文章では漢字が使われていないのに、ここでは漢字になってしまう。正確を期すため、本に書かれている通りにしたいので、漢字に変換されないようにするか、あるいは戻って直したりする。そのたびにイライラしする。無理に漢字に変換しなくてもいいのにとさえ思う。
 プロの文章家の文章を引用していると、気づくことがある。パソコンでは漢字になってしまうことばがひらがなで書かれることによって、やさしくなっているような気がする。やたら漢字が連なっていると、堅苦しいし、なんか文章にトゲがあるように感じてしまう。そして漢字を思い切って使う時はその漢字が端的に意味を言い表しているときに使われる。それが文章全体を引きしめる。
 それを感じたので、私も無理に漢字は使わないようにしようと思ったのである。もちろん大した文章など素人なので書けはしないのだが、それでもやさしい文章で、引きしまった文章は美しいし、見た目にもきれいだと思う。だから少しでもそうありたいと、パソコンまかせに文章を書かないようにしているつもりである。


評価
★★


書誌
書名:パソコンは日本語をどう変えたか―日本語処理の技術史
著者:YOMIURI PC編集部【編】
ISBN:9784062576109
出版社:講談社 (2008/08/20 出版)ブルーバックス
版型:253p / 18cm
販売価:945円 (税込)

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