2008年10月03日

池谷伊佐夫著『東京古書店グラフィティ』

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 池谷さんの本を入手したのでまた読んでみる。読んでみるというより古本屋さんの店内のイラストや書き込みにある店の蔵書を目をこらして見ているといった方がいいかもしれない。それが楽しいのである。今回は都内のおもだった古本屋さんがここに登場している。池谷さんがこうして古本屋さんのイラストの本を描くのは、新刊書店が品揃えに個性感がないため、面白味がないという理由だ。だから必然的にターゲットは古本屋さんになってしまうという。(もちろん池谷さん自身が古本好きというのが一番の理由だろうが)
 例外的に個性的な新刊書店を最後に紹介している。銀座のイエナと書肆アクセスがなどである。ただ二軒とも今はない。個性的であるが故に潰れちゃったのかもしれないなんて思う。
 都内でもこれだけ面白そうな古本屋さんがあることを改めて知らされるのだが、如何せんお店の場所がまちまちで、しかも私の生活範囲から結構離れている。たとえば神保町のように一カ所にいくつもの古本屋さんがあれば、たとえ一つのお店に入って本がなくても、違うお店に入って本を探すことが出来るから、行ってもいいかなと思う。
 だけれど、スポットであるお店にわざわざ訪ねて行って、何も収穫がなかったら身も蓋もないなと考えちゃうのだ。確かに古本屋さん巡りは楽しいしだろうし、お店の棚を眺めるのも面白そうと思うけど、欲しい本を探しに出かけて何もなかったと考えると「ちょっとなぁ」と二の足を踏んでしまう。
 まして、ネットで探せば簡単に在庫の検索ができる時代である。その便利さを享受してしまっているので余計である。だから面白そうなお店だなということで、ただそれだけで足を運ぶことはないと思う。だから仮に何かの用で近くまで行ったときに寄ってみたいと思うのだ。

 池谷さんは中学生の頃江戸川乱歩に沈溺したらしい。それで近隣の町の古本屋さんを巡り乱歩の本を探したという。その数も相当量になったらしいが、全作品が集まった頃、江戸川乱歩の全集が刊行された。思わず「冗談じゃない。これまでの苦労はどうしてくれるのだ」と地団駄を踏んだという。「だろうな」と思う。全集というのはその名の通り、その作家の全作品が、それこそ絶版本であってもそこに収録されちゃうわけだから、昔の作品を読みたいと思って、苦労して古本を集める意味を失なわせる。しかも全集は統一された装丁できれいに並ぶわけだから、腹も立つ。
 けれど池谷さんは「負け惜しみでいうのではないが、発売当時の単行本は、値段、装丁、造本、はては活字にいたるまでその時代が表れており、ストレートに作品の世界へ入っていくことができる」という。これは私もそう思う。
 何度も書いたけど、私は開高さんの昔の単行本が欲しくて、古本屋巡りをはじめた。それはたとえば文庫でも読めるし、全集でも読める。だけど発売当時の単行本そのものの味わいはそこにはない。集めてみると、発売当時の単行本はいいのである。文庫で読んだ作品の親本である単行本がこれだったのかと、手に取り感慨深くなってしまうのである。池谷さんの言う通り、本にその時代のすべてが表現されているような気がしてしまうのである。好きな作家の作品だから、いろいろな意味でいとおしいのである。
 こうした私の行動を文庫にあるのだから内容は同じじゃないと馬鹿にする。「いやいや違うのだ」と言ってもなかなか理解してくれない。
 私が親本である単行本にこだわる理由は“発売当時の本”に価値があると思っているからである。といっても初版本にはこだわってはいない。少なくても“発売当時の本”の雰囲気を残している単行本であればいいと思っているだけだ。その雰囲気を味わいたいだけなのだ。だから私はビブリオマニアではない。
 先に読んだ『チャリング・クロス街84番地』のヘレ-ン・ハンフが17世紀の頃の本を探し求めたのも、これだったんじゃないかなと思っている。
 最近は阿刀田さんに凝っちゃっているところがあるが、その阿刀田さんの本だって出来れば発売当時の単行本が欲しいと思っているので、文庫では簡単に探せるけど、あえて単行本にこだわっているのも、そんな理由からだ。
 だからといって、文庫が悪いなんて全く思っていない。文庫も好きである。だけど時代の雰囲気を感じたければやっぱり単行本だと思うのだ。


評価
★★★


書誌
書名:東京古書店グラフィティ
著者:池谷 伊佐夫
ISBN:9784487754731
出版社:東京書籍 (1996/11/07 出版)
版型:163p / 21cm / A5判
販売価:1,528 円(税込)

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