2008年10月21日

阿刀田高著『花のデカメロン』

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 この本はボッカチオの『デカメロン』の入門書というか、解説書である。もちろんそこいらにあるその手の類の本ではない。例によって阿刀田流のスパイスをきかてある。
 『デカメロン』自体14世紀の作品だから素朴だけど、荒削りであり、時には話のつじつまがおかしい部分もあるらしく、それを20世紀(この本が出たときはまだ21世紀にはなっていない)の現代風に直せばこのようにした方がいいと、阿刀田流にアレンジしたものも添えられている。
 ご存じの通り、『デカメロン』は当時ヨーロッパで大流行したペストを逃れて、上流階級の七人女性と三人の男性が別荘で14日間過ごすかたわら、毎日みんなでお話をしましょうということで、その語られた話をまとめたものである。もちろんボッカチオの創作だが。こういう舞台装置を作って物語をはじめるのを“枠物語”というらしく、あの『千夜一夜物語』もタイプとしてこれに属する。
 で、当時の上流階級というのは腐敗しきっており、しかもペストでいつ自分たちが死ぬかもしれないという状況であったから、生きている間に享楽を満喫しようという風潮であった。
 だから毎度毎度不倫の話ばかりだ。どうしても人間は腐敗するとそっちの方面であれこれうごめくのである。上流階級の貴婦人を恋いこがれる輩がなんとかしてものにしたくて、あれこれ策を弄して近づくとか、あるいは貴婦人自体が若い男に恋いこがれ、なんとか近づきたいとする話ばかりである。おそらく原作だときっと読み切ることの出来ないだろう話を阿刀田さんは今風におもしろおかしく語ってくれる。だから読んでいてくすっと笑える。その点こういう解説書はいい。『デカメロン』には、こんな話があるんだよという雑学的知識が残る。
 ところでこの本の初出は女性雑誌「JJ」だとある。へぇ~、「JJ」を読むというか見る女性がこの阿刀田さんの作品を読むかなと正直思った。「JJ」の読者にはこの作品のユーモアやエスプリはちょっと高尚過ぎないかなんて思ったのだ。だって「JJ」の読者って、3月まで制服を着ていた女子高生が、4月になって短大に入り、制服から私服になり、着ていく服にあれこれ悩み、この雑誌で紹介されるファッションをそのまま着こなす女性をターゲットにした雑誌でしょ?どう考えても無理があるような人でも、“かわいい”ということでこの雑誌を地のままでいっちゃう女性たちである。そんな女性がこの阿刀田さんの作品を読むとは思えない。
 せめてスーツでシャツのボタン二つ外して颯爽と歩くOLさんたちが、この作品を読んでくすっと笑うのがいいと思うのだけれどなぁ。雑誌でいえば「MORE」を二つ折りにして脇に挟んで歩く世代の女性がいい。でも「主婦の友」じゃまずいよな。(もっともこの雑誌も休刊になっちゃったけど)やめよう!これ以上書くと私の品性が疑われちゃう。


評価
★★


書誌
書名:花のデカメロン
著者:阿刀田 高
ISBN:9784334712358
出版社:光文社 (1990/11/20 出版) 光文社文庫
版型:267p / 15cm / A6判
販売価:入手不可

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