2008年10月28日
ジョルジュ・シムノン著『メグレ罠を張る』
このメグレシリーズは昔から読みたいと思っていた。いわゆる推理小説で、マンハントをする側が警察である方が好きなのだ。たとえば、マルティン・ベッグもいいし、キャレラもいい。日本でいえば鳥飼刑事も渋くていい。(ビートたけしはミスキャストだと思うが)
さて今回も推理小説だから、あまり内容に関しては詳しく書いちゃいけないのだろうが、書いてしまう。のでもしこの小説を読もうと思う方はここでやめてください。(というように、こんな感じでネタバレしてしまうから以後読まないでね、という文章をよく見かけるけど、皆さん本当にそこでやめられます?少なくとも私は読んじゃうだな)
パリで五人の女性がナイフで刺され、衣服が引き裂かれた殺人事件が発生する。その捜査をメグレ警視が陣頭指揮をして行う。物語はもう五件の殺人事件が発生してしまっており、犯人と思われるべき人物は登場しない。従って、「こいつが犯人だろう」という推測を読んでいて楽しめない。
この物語を面白くしているのは、どうやって殺人事件の犯人をあぶり出すかにかかっている。題名にもあるように、メグレ警視は罠を張るのである。最初から罠を張ることから物語は始まっており、どのような罠で、なぜそうした罠をメグレ警視は張ったのかが、まず興味の対象となる。
友人で医師のパルドンに食事を招待されたメグレ夫妻は、そこで有名な精神科医のティソオを紹介される。メグレはその精神科医のティソオと今回の捜査に当たって、犯人像を語り合う。そこに今回の罠のからくりが隠されている。
メグレは犯罪者たちが遅かれ早かれ自分のやった行為を自慢するという欲求に駆られると語る。そしてティソオもメグレが捜している連中は、自分でも知らぬ間に捕まえられようという欲求に駆られている。それは自尊心の表れで、自分(犯人)は周りの人々に何の変哲もない人間だと思われることが我慢がならないのだ。自分の力を大声で言いたいのだ。だからといってわざわざ捕まりたいわけじゃない。彼らが捕まるのは犯行を重ねる内に身辺に払う注意が少なくなってきて、警察や運命をなめることで逮捕されてしまうというのである。
そしてメグレは「かりに誰か他の人間が逮捕されて、いわばまあわれわれの殺人犯の地位におさまりかえり、犯人が自分の栄誉のように考えているものを横どりしたらどうでしょう・・・・」と言うのだ。
これがメグレの作戦であり、犯人の自尊心を奪うことで、逆に犯人を挑発し、もう一度犯罪を起こさせ、犯行を行う前に捕まえようと罠を張る。
そして一般市民に扮した婦警を襲われるが、警察は彼を取り逃がす。しかし彼の衣服についていたボタンと服の生地の一部をその婦警はもぎ取る。そこから面が割れ、一人の男が逮捕される。しかし彼は自供しない。
被疑者を尋問している間、また一人の女性が襲われ殺される。しかしこの犯行は私でもその男をかばうための犯行だとわかる。少なくともこの殺人事件の犯人は彼の妻あるいは母親のどちらかだ。
ざっと書いてしまうたわいのない小説のようになってしまうが、犯人逮捕のための心理作戦は結構面白かった。で、一つ知ったことは、日本の警察では取り調べ室で犯人あるいは被疑者の食事にカツ丼をよく出すシーンがテレビで映し出される。しかしフランスではビールとサンドイッチらしい。
評価
★★★
書誌
書名:メグレ罠を張る
著者:ジョルジュ・シムノン 峯岸久訳
ISBN:9784150709518
出版社:早川書房 (1991/09 出版) ハヤカワ・ミステリ文庫
版型:233p / 16cm / 文庫判
販売価:546 円(税込)
- by kmoto
- at 16:37
comments