2008年12月04日
東海林さだお著『超優良企業「さだお商事」』
しばらく読んでいなかったが、私は東海林さだおさんのエッセイが大好きである。東海林さんが描かれる漫画より好きだと言っていい。だから自分の本棚にもかなりの冊数が東海林さん本が収まっている。
久しぶりその東海林さんの本を手にした。といっても、この本は藤原あつこという人が聞き手になって、東海林さんの話を聞く。東海林さんの仕事をたとえば『さだお商事』のオーナーということにして、創業三六周年(2002年で)を迎えられるほどのアイデアの豊富な企業としてその秘密を探ろうとしている。
次々とヒットを生み出す「さだお商事」にはどんな秘密があって、「さだお商事」のコンセプトが昨今苦戦を強いられる一般企業に生かせないかということらしい。また東海林さんのそこでの生活、あるいは生き方が企業で働くサラリーマンたちに自己啓発を促すようなかんじで構成されている。さすが発行元が東洋経済新報社である。一章ごとに“「さだお商事」を会社分析”として東海林さんの話す内容を企業やサラリーマンたちに役立つようにまとめられている。ただこれは無理があって、しかも非常に馬鹿らしい。
東海林さんが話す内容をどこか自分の会社に生かせないか、あるいは社員の自己啓発に役立たないかとしてしまうと、どうも茶番劇ぽくなってしまう感じがする。しかもこの藤原という聞き手、恐ろしくへたくそなのだ。そこいらのOLか、こいつは、と思えるほど、頭が悪く、下手な相づちが鬱陶しいのだ。さすがにこれにはまいった。
ただ、東海林さんが漫画を描く上で、自分の気持ち、あるいは精神を若く保っていることの苦労を知った。今まで読んできたエッセイや漫画は、オジサンが無理して若作りして、逆にそれが滑稽になっている。それがおもしろかった。
しかしそのジェネレーションギャップが生み出すユーモアは、実際作者が体験するなり、感じていなければ描けないものだと、改めて知った。だから無理しても、若い世代の感覚に敏感になろうとしている。いやそうしなければならないのだ。東海林さんは次のように言う。
漫画家の場合は、漫画がおもしろくない、時代遅れだ、感覚がヘン・・・・などとならないとも限りません。ぼくはその場面を想像すると、たまらなく怖いのです。肩たたきされるサラリーマンの心境がよくわかります。
だから東海林さんは次のように考えるのである。
ぼくは、デビュー以来ずっと、「世の中にウケるものは何か」というテーマを追い続けてきました。漫画は時代に合ったおもしろさでなければ、誰にも受け入れられません。時代とともに、人々の感覚も、読む人も、異なってきます。新しい感覚を持った読者が次々と生まれてきます。そうした人たちがおもしろいと感じてくれなくては、連載漫画は続きません。
自分が若いときは、読者もおなじ年齢だから、そのままの感覚で描いていればよかったのですが、自分が年をとってくると、読者は自分より若い世代になってきて、自分の年齢との格差が広がってきます。こうしたときに、自分の感覚のままでいると、ぼくの読者層である若い世代の感覚とズレが生じてきてしまうのです。
ですから、若い人たちの感覚を取り入れることは、必須であり最重要条件です。
ぼくにとって、「若くある」ということは仕事を続けていくうえで不可欠です。自分を若く保って、最新の社会感覚を取り入れていかないと、漫画が時代に遅れてしまいます。必死に時流に遅れまいと、それなりの努力をすることが必須なのです。
今まで東海林さん自身の文章や東海林さんが描く漫画を大笑いしていただけだったが、そこには自身の苦労があることを知らされた。オジサンが時代に遅れまいと、合コンに参加したり、プリクラをしたり、大変だなと思うけれど、幸い東海林さんはそうしたことを体験することに苦を感じていなく、むしろ楽しんでおられるから、明るい話題として提供されるのだろう。
評価
★★
書誌
書名:超優良企業「さだお商事」―ショージ君のイキイキ快適仕事術
著者:東海林 さだお【著】 藤原 あつこ【聞き手】
ISBN: 9784492041864
出版社:東洋経済新報社 (2002/12/05 出版)
版型:188p / 20cm
販売価:1,260円 (税込)
- by kmoto
- at 12:39
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