2009年01月30日

阿刀田高著『アラビアンナイトを楽しむために』

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 世の中にはいわゆる古典、あるいは名著と呼ばれる本の書名、その著者などの名前は知っているけれど、実際読んだことがないというのが多いんじゃないかと思う。それを読んでみようと思えば、膨大な労力、根気、時間を要することになることがわかっているから、いくら古典、名著であっても、思わず伸ばした手を引っ込めてしまう。つまり読めないということだ。
 阿刀田さんはそうした古典、名著と呼ばれるそうした作品を阿刀田流にアレンジして“この本はこういう本ですよ”と内容を教えてくれる。この本を読めば、少なくとも書名や著者名だけでなく、少々内容も知ることができるわけである。いわば古典読本というところであろうか。阿刀田さんの本にはこういう本がいくつもあって、それを読めば現物を読まなくても、何となくそういう本かと知ることができるので、横着者にはもってこいである。
 この本もその一冊である。物語は、ササン朝ペルシャの時代で、シャーリャルという大王がいて、弟にサマルカンドの王、シャー・ザマンがいた。この兄弟がいないとき、それぞれの妃は黒人奴隷を連れ込んで、淫靡な遊びに耽っていたことを知る。このことからシャーリャル王は女性不信に陥り、「この大地の上に一人として貞淑な女などいやしない。女はこの世に生かしておく必要のない生き物なのだ」と宣言し、妻、妾をはじめ後宮女奴隷をことごとく殺してしまった。この後、シャーリャル王は夜ごと処女を求めて夜伽をさせた後、朝が来ると殺すようになった。このため町には処女がいなくなる。
 この時大臣の娘シャーラザットは自ら立候補してシャーリャル王の夜伽となる。シャーラザットは妹のドゥニャザットと共に王の寝床に赴き枕元で物語を語る。その話が余りにもおもしろいものだから、シャーリャル王はシャーラザットを殺すことが出来ず、とうとう物語は千と一夜続いた。そのうち王は自分のむごい仕打ちを後悔し、シャーラザットを王妃として迎え、この間三人の男の子を産んだ。
 笑っちゃたのは、千夜一夜で三人の子どもを産むことが可能かどうか、阿刀田さんは計算するのである。それによると、懐妊期間を十月十日とすれば、三人の子どもを産むのに九百三十日かかる。ということは1001-930=71日だから、子供を産んで次に妊娠するまでに平均三十日しかなかったことになる。もちろん不可能じゃないだろうけど、母体はぼろぼろじゃん、というのだ。「外国の遠い昔の空想譚ながら、母体保護の立場からおおいにご同情申し上げたい」と阿刀田さんはいう。シャーラザットの妹もシャーリャル王の弟の妃となってそれこそめでたしめでたしということになっている。
 阿刀田さんはその『千夜一夜物語』の中から気のおもむくまま十二話をこの本で紹介している。まぁ内容はそれほどおもしろいとは思えなかった。そもそも空想の世界が現実の世界と交錯していて、“こんなことあり得ない”と思っちゃうとおもしろくも何ともない。物語の結末から、訓話めいたことを導き出すことも可能かもしれないが、それを言いたいために無理な話を作っているとも言えなくもない。もともと教訓などを導き出す話が好きじゃないので余計である。まぁ、この本を読んで実際の『千夜一夜物語』を読んでみようという気にはならなかった。

 この阿刀田さんの本にもイスラムの一夫多妻制について触れられている。それが認められて来た理由が書かれていて、こちらの方がわかりやすかったので、それを書き残したい。

 「たとえば回教徒の世界では、四人まで妻を持つことが許されている。これはアラブ人の好色さを表わすように受け取られているが、そればかりではあるまい。激しい抗争を繰り返して来た砂漠の民族には親族よりほか信頼できるものがない。多くの子孫を得ることは繁栄の道であった。しかも二人の妻では仲たがいしやすく、三人でも二対一の形になって争う。四人の妻の場合にほどよいバランスがとれる、という智恵に由来するものだという」


評価
★★


書誌
書名:アラビアンナイトを楽しむために
著者:阿刀田 高
ISBN:9784101255088
出版社:新潮社 (1986/12/20 出版)新潮文庫
版型:297p / 15cm / A6判
販売価:499 円(税込)

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