
艶笑小咄集である。開高健さんもこの手のものを書いている。たぶんそこでか、あるいは他のエッセイでか、バーなどでこういう小咄を用意しておくと女性にもてると書いてあったのを思い出す。まぁ、少々エッチで、ユーモアとエスプリが利いている話ができればそんなこともあるかもしれないが、私に言わせれば、わざわざそんな話を用意する方が下心ある感じがしてしまう。さらに言えば、こんな小咄で今の女性が喜ぶとは思えないので、昔の話である気もする。
阿刀田さんはこの本を作るに当たり、この手の話を集めるのに苦労されたかもしれないけれど、逆に楽しんでいた気配もうかがえる。しかし読む方は、くすりと笑えるけれど、ただそれだけで、とりたて面白いというものでもない。読んでそれでおしまいといった感じだ。
これで私の感想は終わっちゃうのだけれど、それじゃあまりにも寂しいので、いくつか面白いと思ったものを書き出してみる。まずはあっちの方面からいくつか・・・・。
「ねえ。ママ。ボク、弟や妹がほしいな」「パパにお願いしてごらんなさい」「でも赤ちゃんはママが作るんだろ」「パパが手伝ってくれなきゃ作れないわ」「じゃあパパにお願いするよ。今度の誕生日までに作ってくださいって・・・・」「そんなに早くは無理よ。一年くらいはかかるのよ」「じゃあ、よそのおじさんにも手伝ってもらおうよ」
初月給をもらってニコニコしている社員に上役がいった。「お母さんにおみやげを買って帰れよ」「はい。そうします。父が早く死んで女手ひとつで育ててくれたんですから」「それは大変だったろうなあ」「しかし、何を買ったらいいのか迷ってしまって・・・・」「お母さんの一番好きなものがあるだろう?」「はあ。しかし・・・・若い男はどこで売っているんでしょう?」
“広い”女にはレモン汁を使えばよい、とドクトルに教えられたニュマ氏がレモンをしこたま買い込んで帰る途中、夜の女が近づいて来た。「よし、まずこの女で試してやれ」こう思ったニュマ氏は女のアパートへ行って、「レモンをしぼって入れると、とても長続きするんだぞ」一つしぼり、二つしぼり、三つしぼり・・・・いっこうに狭くなる様子がないので五つ、六つとしぼってそそぎこめば、女はイライラしてつぶやいた。「ねえ、あんた。あんたはここに生牡蠣を食べに来たの?」
アメリカ人は、単細胞人間。自分が世界一だと信じているから、ライバルが現れると猛然とくやしがる。
アメリカのコンドーム会社にソ連政府から注文が来た。「ソ連民衆の産児制限および性病予防のためコンドーム一万ダース送られたし。ただしサイズは十インチ」コンドーム会社は早速荷物の発送に取りかかったが、外箱に次のスタンプを押すことを忘れなかった。「十インチ、ただしSサイズ」
初夜があける頃、新郎が不満そうに言った。「キミ、まだ昔の恋人が忘れられないんだな」「あら、どうして?」「さっき、キミがトイレに立ったとき、ボクはチャンと見たんだぞ。キミはベッドの柱に恋人の名前を書いて、ため息ついていたじゃないか」「恋人の名前?」「そうだ。正一君っていうんだろう、その人は」「あら、いやだ。正一は名前じゃないわ。回数のことよ」初夜から六回戦となると花嫁が溜息をつくのも無理はない。
動物たちは、おおむね後向位でセックスをおこなう。このスタイルでは、雌は四つ足をしっかり踏ん張って、止まっていてくれなくては挿入がむつかしい。前へ前へと逃げて行ったのでは、うしろからはとても結合ができない。このため動物たちには強姦はありえないのだという。強姦は正常位とともに始まった、と言えるかもしれない。
アメリカに行くと、ピーター・メーターという大人のオモチャがあるそうだ。ピーターは男性シンボルの愛称で、一見したところピーター・メーターはただの物差しだが、長さに応じて楽しい解説ついている。
一インチ ただの蛇口。女に生まれるべきだった。二インチ 九十五パーセントは想像力でいこう。三インチ いくらかましだがまだ不足。四インチ いちゃつくのが精いっぱい。 五インチ ご家庭用サイズ。六インチ 秘書嬢を喜ばすことができる。七インチ 古い家庭道徳を破壊するおおそれあり。八インチ 大きい女か、小さな牛に。九インチ 酒場の話題によし。十インチ 見世物にのみよし。
これはある葬儀屋。偶然知りあった女と町のホテルに泊まって情熱的な一夜を過ごした。翌朝、別れぎわに女が未練がましく、「あなたって上手ねえ。それに大きくて、とてもいい形ね」と口をきわめて男の持ち物をほめたたえた。男は恐縮し、うやうやしく一礼してから、「すっかり萎れておりますが、もう一度遺骸とご対面になりますか」
女子寮の一室。マギイのお腹にM字型のあざがついているのを見つけて、サリイが尋ねた。「それ、な-に?」「ああ、ボーイフレンドとキッスをしたのよ。彼のバックルの痕がついちゃったのね」「わかった。Mの字だから・・・・ミネソタ大学の男の子ね?」「ううん。ワシントン大学なの」
ワシントン大学ならWの字になるはず。男は頭をどちらに向けてキッスをしていたのだろうか?
まぁこんなもんである。別にこの手の話は嫌いじゃないけれど、私は次の小咄の方が笑った。
ある日のこと、一人のロシア青年が「フルシチョフは馬鹿だ。フルシチョフは馬鹿だ」と、叫んで赤の広場を走り抜けた。その男はたちまち捕らえられ二十三年の禁固刑に処せられた。三年は党書記侮辱罪に対してであり、二十年は国家機密漏洩罪に対してであった。
評価
★★
書誌
書名:ジョ-クなしでは生きられない
著者:阿刀田 高
ISBN:9784103343028
出版社:新潮社 (1980/08 出版)
版型:217p / 20cm / B6判
販売価:入手不可