2009年04月02日
阿刀田高著『私の聖書ものがたり』
高校時代読んだ遠藤周作さんのエッセイに、いわゆる中東で生まれた宗教は、その自然環境の厳しさからか、教えに厳しさがあるというようなことが書かれていた。つまり仏教のような母的ではなく、父的な厳しさがそこにはあるようなことが書いてあった。
今回阿刀田さんのこの本を読んでいて、旧約聖書に書かれている“神”の性格があまりにも厳しいものだと感じたので、そんなことを思い出した。たとえばモーセの十戒には次のように書かれている。
1.私はあなたの神、主であって、あなたをエジプトの地、奴隷の家から導き出したものである。あなたは私のほかに、何者をも神としてはならない。
2.あなたは自分のために、刻んだ像を造ってはならない。上は天にあるもの、下は地にあるもの、また地の下の水の中にあるものの、どんな形をも造ってはならない。それにひれ伏してはならない。それに仕えてはならない。
3.あなたは、あなたの神、主の御名をみだりに唱えてはならない。
4.安息日を覚えて、これを聖とせよ。六日の間、働いてあなたの全ての業をせよ。
あなたもあなたの息子、娘、僕、婢、家畜、またあなたの門のうちにいる他国の人々もそうである。
あなたはかつてエジプトの地で奴隷であったが、あなたの神、主が強い手と、伸ばした腕とをもって、そこからあなたを導き出されたことを忘れてはならない。それゆえ、あなたの神、主は安息日を守ることを命じられたのである。
5.あなたの父と母とを敬え。これはあなたの神、主が賜る地で、あなたが長く生きるためである。
6.あなたは殺してはならない。
7.あなたは姦淫してはならない。
8.あなたは盗んではならない。
9.あなたは隣人について偽証してはならない。
10.あなたは隣人の家をむさぼってはならない
このうち1番と2番目を阿刀田さん流にくだけた感じで書くと次のようになる。
1.私はあなたなちの神、唯一にして、全能の神である。あなたちは、私以外のどんなものも神としてはならない。
2.偶像を作って神としてはならない。私は嫉妬深い神であるから、私を憎む者には子孫にまで罪を問い、私を愛し私の戒めを守る者には末代まで恵みを与えよう。
この本は多分手塚治虫さんの『旧約聖書物語』の一部を使い、阿刀田さんが聖書の中の物語をわかりやすく書き直したものである。私はクリスチャンじゃないので、聖書を読んだことがない。一度読んでみたいとは思うけれど、たぶん挫折するだろうという思いがあるので、読まずにいる。なぜ挫折すると思うのかというと、私は信仰というものに懐疑的なところがあって、基本、人が信仰に入るのはその弱さのためじゃないかと思うところがある。もちろんそれはそれで何ら問題はないのだけれど、私には信仰に入るということが、どこか現実逃避をじゃないかと感じるから、そんな神の存在を書いたものついて行けなくなる気がするのである。
訳のわからない、あるいは道理的でない現実をありのままに受け入れればいいものを、わざわざそれは神がなされたことみたいに解釈するのがよくわからないのである。わからないから信仰や宗教に関することで余計なことを言わない方が無難だ。だからこれ以上言うこともない。
ただ、この聖書の世界での神はあまりにも厳しすぎる。“そんなのしょうがないじゃん”と思うことも、許してくれない。そういう妥協のなさについて行けない。神の立場に立てば、俺の言うことを聞け!そうすれば恵みを与えようというのはわからないわけじゃないけれど、人間の立場に立てば、“そんなこと言われても・・・”と言いたくなる現状があるように思えるのだ。私なら現実肯定派なので、はっきりと“それは無理!”と言ってしまうような気がする。
絶対的な神の存在があることで、人というものの弱さや未熟さを言い表すのは結構だけれど、だから罰が当たったと言われちゃうと素直に受け入れられない。
そもそも神という存在は、神をそのものを相対化して、人とは何かを考える時に便利である。人というものがあり、一方で神という存在があれば、比較しやすい。そこから人間の弱さ、未熟さ、あるいは無知など簡単に抽出できそうである。だって一方が絶対的なんだからね。だからものすごく不謹慎な言い方かもしれないけれど、神は人を考えるときのいいツールみたいなところがあるんじゃないかと思うのだ。そして理解不能のものをすべて神のなせる技と言ってしまえば、すべて解決できちゃいそうなのでいやなのである。
まぁ、無神論者の戯れ言して考えてもらっていい。ただこうして物語として聖書を読めるなら、面白い。
評価
★★
書誌
書名:私の聖書ものがたり
著者:阿刀田 高
ISBN:9784087813210
出版社:集英社 (2004/11/30 出版)
版型:317p / 19cm / B6判
販売価:1,470円(税込)
- by kmoto
- at 16:07
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