2009年05月20日
小路幸也著『マイ・ブルー・ヘブン』
東京バンドワゴンの最新刊を読み終える。この本は今までのシリーズとは違い、現在の三代目の勘一と亡くなられて幽霊になって登場しているサチさんとの出会いを中心に、堀田家の歴史なども明かされて、どちらかと言えばストーリーの内容より面白い。お話の世界とはいえ、へぇ~そうなんだ!と感心しちゃった。“東京バンドワゴン”という古本屋さんはそこいらにある街中のしがない古本屋さんとは違うこと知らされる。
話は終戦直後のアメリカによる占領時代である。子爵五条辻家にGHQが乗り込んでくる。慌てた当主政孝は長女の咲智子に秘密の文書が入った小さな木箱を渡し、静岡の伯母さん家へ逃れろというところから始まる。
なんとか咲智子はGHQから逃れ、上野の駅に向かうがそこでGHQの関係者に捕まってしまう。それを助けたのが、キングス・イングリッシュを流暢にしゃべる勘一であった。
えっ、勘一さんがキングス・イングリッシュをしゃべれるの?
とにかくそこから咲智子を助け出し、勘一の実家である“東京バンドワゴン”という古本屋に連れてくる。ここで咲智子と勘一のお父さん、つまり“東京バンドワゴン”の二代目草平は自己紹介をする。なんと勘一のお父さんはケンブリッジ大学を卒業したらしく、その関係で勘一にキングス・イングリッシュを教え込んだという。
そして草平の父親、つまり“東京バンドワゴン”創業者である達吉は、三宮達吉といい、明治の頃、財閥の娘さんと結婚し、鉄道事業で一時代を築いた政財界大物であった。三宮達吉はある日突然引退し、三宮とも縁を切り、堀田の性に戻り、古本屋をこの地で始めたという。そのため“東京バンドワゴン”には達吉の関係ですばらしい蔵書が蔵にたくさん在庫している。草平はケンブリッジにいた頃、二年下の五条辻政孝と友人であった。勘一はその頃医学生だった。
えっ、勘一さん医学生だったの?!
とにかく機密文書を持っている咲智子には危険が迫ってくるから、ここは咲智子を勘一の嫁として迎えたことにして、名前を堀田サチと変えることとなった。
何かすごいことになってきた。
“東京バンドワゴン”の創業者達吉は明治に鉄道事業で一時代を築いた政財界大物。そしてその息子二代目の草平はケンブリッジ大学を出ていて、さらに三代目となる勘一がキングス・イングリッシュをしゃべる、医学生。そしてあのサチさんが子爵の娘さんである。今までこのシリーズを楽しんで読んできた者にとっては、このシチュエーションは驚きである。それだけで話の展開より面白くなっちゃう。
一応話の内容にも触れておかないといけない。この頃“東京バンドワゴン”には今と同じように多様な人が集まるのは同じであるが、時代が時代だけに、終戦直後の時代を反映する人々が集まってくる。戦災孤児のかずみさん。後に女医になる人。混血の若き貿易商高崎ジョー、日本陸軍の情報部の軍人であった和泉十郎、ジャズシンガーのマリアさん。
草平と勘一、そして“東京バンドワゴン”に集まった彼らは、サチさんの親を助けるために活動するのである。そしてなんとかサチさんの両親を助け出す。勘一はサチさんを守るために偽装結婚をしたのだけれど、焼けぼっくりに火がついて、サチさんと結婚し、この“東京バンドワゴン”で暮らすことになるのである。
勘一とサチさんの一人息子の我南人の名前の由来もここで明かされる。名付け親は勘一で、南の国住みたかったからだという。我南人がミュージシャンになった影響は、ジョーやマリアや十郎さんの影響だということになっている。
すごいぞ、“東京バンドワゴン”と思った本であった。
評価
★★★
書誌
書名:マイ・ブルー・ヘブン―東京バンドワゴン
著者:小路 幸也
ISBN:9784087712902
出版社:集英社 (2009/04/30 出版)
版型:305p / 19cm / B6判
販売価:1,575円(税込)
- by kmoto
- at 10:22
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