2009年06月10日

アガサ・クリスティー著『カーテン』

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 さあ~て、これで用意したクリスティーの作品は最後になる。副題にもあるようにこれはポアロの最後の事件である。舞台はポアロがデビューしたスタイル荘である。
 妻を亡くしたポアロの友人であるヘイスティングスにポアロから手紙が届く。今スタイル荘にいるから来ないかと。ヘイスティングスは一年以上ポアロと会っていなかったから、その誘いに乗る。そしてポアロにあってその姿に愕然とする。

 「老齢による惨めさほどいたましいものはないと思う。
 気の毒な友。いままで私は彼の風貌をいくどとなく描いてきた。いまはただ昔と違ったところだけを述べよう。関節炎のため立居もままならず、どこに行くのも車椅子の厄介にならなければならない。かつてはまるまると肥っていたからだも、すっかり肉が落ちてしまった。痩せ衰えた小柄な男に変わっている」

 そう、ポアロは以前のダンディーなポアロでなかった。しかしからだは痩せ衰えて、車椅子のお世話になっていても、あの“灰色の脳細胞”は健在であった。
 そこでヘイスティングスは5件の殺人事件の資料をポアロから見せられる。どの事件も被告または容疑者が問題の犯罪を犯したことは明白な事件で、それぞれが単独で関連性は見出せない事件であった。
 しかしポアロはこの一見関連性のないつの5つの事件が容疑者Xによって引き起こされた事件であり、その真犯人である容疑者Xは今このスタイル荘にいるのだという。スタイル荘は現在旅館になっており、その宿泊客の中に真犯人がいるというのだ。ポアロは車椅子の世話になっているので、ヘイスティングスにポアロの手足となって動いてもらいたくここに呼び寄せたという。
 ここにはヘイスティングスの娘も来ていた。フランクリンという科学者の助手として働いていた。ヘイスティングスはこの娘の動向が気になって仕方がなく、ジュディスに忠告をするのだが、いい年の娘がいつまでも親の言うことなど聞くもんじゃない。だんだん不安になるヘイスティングスは娘を拐かす男を殺害しようと行動をとってしまう。(それはポアロによって防がれたのだが)
 そして事件が起こる。このスタイル荘の新しい持ち主となったジョージ・ラトレルが妻のデイジーを誤ってライフルで撃ってしまう。幸い急所を外れ、事なきを得たのだが、次にフランクリンの妻が毒を飲んで自殺する。
 ここでもそれぞれの事件には関連性は見出せないのだが、事件を起こすの人間を唆す人間がいたのだ。つまり直接手は下さないが、言葉巧みに、不安や心配を増長させ、事件を起こさせる。そして人が死ぬ。スタイル荘以前の5つの事件で唆すことで殺人事件が起こせることを知ったXは快感を覚え、ここスタイル荘でも同じ手口で事件を起こしたのだ。そしてヘイスティングスも危うくその手口に乗るところであった。
 ポアロは容疑者Xの正体を知っていた。しかしXの犯罪は完全犯罪であり、証明のしようがない。だからこれ以上の殺人を防ぐためにはXを殺すしかない。そしてポアロはXを殺す。ポアロはその後睡眠薬を多量に飲んで自殺する。

 文末の解説によると、『カーテン』は1975年に発表され、エルキュール・ポアロはこの『カーテン』事件で最後に帰らぬ人となる。そして、この作品が発表された直後に、アガサ・クリスティーも不帰の客となる。事実上、『カーテン』が遺作同然の作品となった。

 しかしポアロはXを殺すしかなかったのだろうかと思う。スタイル荘以前の5つの事件、そしてここスタイル荘で起こった事件の真相を告発することができたんじゃないだろうか。“殺人教唆”という言葉もあるくらいだから、それだけでも充分犯人を挙げることができたんじゃないだろうかと思った。このあたり多少無理を感じたんだけどね。


評価
★★★


書誌
書名:カーテン―ポアロ最後の事件
著者:アガサ・クリスティー 中村 能三【訳】
ISBN:9784151300332
出版社:早川書房 (2004/11/30 出版)ハヤカワ文庫―クリスティー文庫
版型:364p / 16cm
販売価:672円(税込)

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