2010年03月31日
マイ・シュ-ヴァル ペ-ル・ヴァ-ル-著『サボイ・ホテルの殺人』
またマルティン・ベックシリーズに戻る。第6作目である。スウェーデンの実業家のヴィクトール・パルムグレンが系列会社の重役たちの前でスピーチをしている最中、近づいて来た男にピストルで頭部を撃たれた。そして犯人は窓から逃亡した。
パルムグレン傘下の企業は手広く事業をしていたが、アフリカなどに武器を輸出していたと黒い噂もあった。が、とにかくパルムグレンはスウェーデンの経済界の大物であった。
その彼が殺害されたのである。警察上層部は嫌が上でも事件を重要視せざるを得なかった。彼の殺害が政治的背景があるようにも思えたからである。そこでマルティン・ベックがマルメのサボイホテルへ派遣される。
事件は彼の事業内容による国際的トラブルか、それとも彼の部下たちの反逆による暗殺か、いくつかの糸はあるのだが、すべて途中で切れてしまい、捜査は行き詰まっていく。
そうしているうちにマルティン・ベックはそもそもこの事件は政治的背景とか、ビジネストラブルとか、そういう厄介なところで起こった事件ではなく、もっと単純なところで起こった事件ではないかと思い始める。
事件直後、犯人に良く似た男が、マルメからコペンハーゲンに向かう船の甲板で、黒い箱を持って佇んでいたという情報が入るが、その男が何者か特定することが出来ずにいた。犯人が使ったと思われる銃もいくつか特定されつつあったが、これもはっきりしない。
そんな中コペンハーゲンから送ってきた事件リストの中に、浜辺を散歩している家族の息子が砂浜に打ち寄せられた黒い箱をみつけ、中身がサボイホテルの殺人事件で使われた銃のリストの中にあった銃が入っていた。その銃は射撃練習場で使われるもので、判読しづらいが名前も入っていた。
浜辺で見つかった銃の持ち主、スヴェンソンは、以前パルムグレン傘下の工場で働いていたが、工場が閉鎖され、解雇されていた。さらに住んでいたパルムグレン所有のアパートも策略のよって追い出されてしまっていた。マルティン・ベックは事件の動機を次のように推理する。
「その場合、スヴェンソンは相当長期間にわたって、踏んだり蹴ったりの目にあったという事実を想起する必要があると思う。これはただ単に自分の運が悪いのではなく、ある特定の人物、ないしは集団から不当にあしらわれた結果なんだと思いはじめたとき、彼の憎悪は偏執的な敵意にまで昂まったと見ていい。言ってみれば、一つまた一つ身ぐるみ剥がれていって、最後に丸裸にされてしまったようなものなんだから」
「そしてその集団の代表がパルムグレンだったというわけか」とマルティン・ベックと一緒に捜査しているのペール・モーソンが言う。
犯人のスヴェンソンは逮捕後、「あいつを殺してやりたいと思ったことは、あの前にもあったと思います。といって、あらかじめ計画を練っていたわけじゃありません。ところが、あそこにああやって立っている彼の姿を見、自分がリボルバーを持っていることに気づいたとき、いまならあいつを射ち殺すことなど造作もないじゃないか、という考えがパッとひらめいたんです」と言うのであった。 事件は政治的背景やビジネストラブルではなく、一人の男の恨みから起こったもので、ベックが思った通り、単純な動機であった。
この話で妻との仲が冷え切っていたマルティン・ベックは、別居生活を一人で始めたことが書かれている。別居生活が彼を元気にし、また射殺された昔の部下の恋人とのラヴシーンもあり、ガチガチの刑事ではないことを我々は知って、どこかホッとする。こういうのも人間味があっていい。
評価
★★★
書誌
書名:サボイ・ホテルの殺人
著者:マイ・シュ-ヴァル ペ-ル・ヴァ-ル-
ISBN:9784047910409
出版社:角川書店 (1980/09 出版)海外ベストセラ-・シリ-ズ
版型:304p / 20cm / B6判
販売価:入手不可
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- by kmoto
- at 16:17
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