2010年04月06日
マイ・シュ-ヴァル ペ-ル・ヴァ-ル-著『密室』
前作で私はマルティン・ベックのとった行動が、ベックらしくないと書いて終えた。今回はベックが撃たれた傷の治療後、復帰するところから始まるが、やはりベックは撃たれたときのことが夢に出てきて何度かうなされる場面がある。その後ベックはあの時の行動を次のように考える。
1971年4月のあの運命の日の出来事については、ベック自身、十分に分析する時間があった。その結果、自分の行動は誤っていた、道徳的にも技術的にも誤っていた、という結論に早くから達していた。その見解は、自分が認めるより早く、自分の同僚たちも抱くに至っていたということも知っている。彼は愚かな振舞いをしたからこそ射たれたのだ。
やっぱりマルティン・ベックはあの時の行動を誤っていたと後悔していたんだと思った次第だ。そうでなくちゃまずい。
さて今回の話は、そのベックが撃たれて、療養した後、現場に戻るところから始まる。ちょうどその頃、ストックホルムの銀行に女性と思われる拳銃を持った強盗が入り、1人を射殺し現金を奪い逃走する事件が発生した。
当時ストックホルムでは銀行強盗が多発していて、ベックの同僚のコルベリやグンヴァルト・ラーソンらは、対策本部にかり出されていた。コルベリはベックの復帰の手始めとして、リハビリも兼ねて、密室の中で死亡したスヴェードという老人の事件をやってみろと言って、そのファイルを渡す。ベックはその老人のことを調べ始める。老人は死から二ヶ月経って発見され、しかも完全な密室で死んでいたものだから、警察は孤独な老人の自殺として片づけられようとしていた。しかしスヴェードは銃で撃たれて死んでいた。ベックはスヴェードが自殺であった可能性があったはずがない。銃器なしで自分を撃つことがそう簡単なことであるはずがないと思うのであった。しかも部屋には銃器と呼べるものが一挺もなかったのだ。これは殺人事件であると確信する。
一方銀行強盗の対策本部では、容疑者として、マルムストレーム、モーレンの二人組みの仕業でないかと疑う。そして彼らに食べ物など物資を調達する人物としてモーリッソンという人物がいた。この男たまたま親切心で横断歩道で目の悪い老人を助けていたとき、横断補導員に泥棒と勘違いされる。結局誤解であったことで解放されるのだが、たまたまそこに麻薬警察犬が彼の持っていた食品に何かを嗅ぎつける。食品の中に麻薬が隠されていたのであった。
窮地に陥ったモーリッソンはマルムストレームとモーレンに居場所と、次に襲う銀行のなどをしゃべることで、自らの罪から逃れようとする。捜査本部を指揮していたブルドーザー・オルソンは歓びモーリッソンの条件を呑むが、アパートにはマルムストレームとモーレン居ず、ストックホルムでは銀行強盗が起こらず、マルムで起こった。
モーリッソンは釈放されるが、その後をコルベリやグンヴァルト・ラーソンは彼を尾行する。モーリッソンの隠れ家を見つけ、地下室であの銀行強盗で使われた銃と、そのとき女性が着ていたのと同じ服、カツラを発見する。このため銀行強盗をし、一人を射殺した犯人はモーリッソンだとされた。
実はこの銀行強盗はモーリッソンと当時付き合っていた女の仕業であった。女はモーリッソンのアパートに一人で入り、そこで銃を発見したのであった。女はそれまでの生活苦から脱出するためには銀行強盗をするしかないとして、その行動を起こしたのだ。その時一人を撃ってしまったため、銃を元の場所に戻し、着ていた服、カツラもモーリッソンのいる部屋の地下室に置いて行ったのであった。
マルティン・ベックの方は、スヴェードが外から射殺され、彼が倒れるときその反動で扉が閉まってしまい、完全密室となったことを知り、銃が発砲された場所を綿密に調べると、そこの薬莢があった。その薬莢はモーリッソンのところから発見された銃から発射されたものであることが鑑識から判明する。スヴェードはどうしようもない男であって、吝嗇家であった。個人で当座預金を持ち、定期的に振込があった。モーリッソンはスヴェードから脅され、金をむしり取られていたのであった。そしてモーリッソンはスヴェードの脅しに我慢できずに、最後に彼を殺したのであった。
ベックはモーリッソンを尋問し、彼はスヴェード殺しの犯人だと自供するが、一方で銀行強盗は濡れ衣だと主張する。しかし聞き入れられず起訴される。
裁判ではモーリッソンは銀行強盗で無期懲役となるが、スヴェード殺しは不問とされた。実はモーリッソンは銀行強盗は冤罪であり、スヴェード殺しの犯人だったのである。
スヴェード殺しは不問とされたことで、それまであったベックの昇進の話が、まだは復帰が完全じゃないということになって、話は先送りとなった。ベック自身は現場に居たかったので、これはこれでよかったのだが・・・。
この話はシリーズの中で『笑う警官』を凌ぐ傑作と訳者は言っているが、私にはどうも話が中途半端のような気がした。確かに話はそれぞれ込み入っていて、面白かったけれど、最後は消化不良の感が拭えなかった。
評価
★★★
書誌
書名:密室
著者:マイ・シュ-ヴァル ペ-ル・ヴァ-ル-
ISBN:9784047910676
出版社:角川書店 (1981/06 出版)海外ベストセラ-・シリ-ズ
版型:361p / 20cm / B6判
販売価:入手不可
- by kmoto
- at 05:28
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