2010年04月12日

マイ・シュ-ヴァル ペ-ル・ヴァ-ル-著『テロリスト』

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 ついにこのシリーズ最終巻となった。最後は、今までこのシリーズで出て来た人物たちが総登場となる。テロリスト対策で全員がかり出されるといった感じだ。ただ話は単にテロ対策の話だけでなく、他の事件がいくつかあって、最後はテロ対策と話がクロスしていく。
 まず銀行強盗の容疑で、18歳の未婚の母、レベッカ・リンドの裁判で、マルティンベックが弁護側の証人として出廷する。弁護士のブラクセンによって、彼女が誤解によって銀行強盗にされてしまった経緯を説明される。
 ことのきっかけは、彼女の夫に会いに行くため渡米する費用を銀行に借りに行ったことから始まる。その時いつも携帯している園芸用ナイフを脅しだと行員が勘違いしてまったことで、彼女が銀行強盗にされてしまったと事件の真相が明かされる。
 もともとリンドはスウェーデンの社会体制に批判的だったし、社会システムにうとい生活をしていたので、行員が彼女を銀行強盗と勘違いし、彼女の持っていた大きなバックにお金を詰め込んだので、彼女は銀行でお金を借りることは簡単なことだとしか感じなかったのである。
 一方スウェーデン警視庁幹部は、秋にスウェーデンを訪問する米国上院議員の扱いに頭を痛めていた。そのため要人警護体制の視察のためグンヴァルト・ラーソンを某国に派遣した。結局ここの大統領は国際テロ組織ULAGに暗殺され、ラーソンもその爆破現場で事件に巻き込まれるが、そのテロ集団のテロのやり方を学習し、今度ウェーデンに訪問する米国上院議員のテロ対策に応用する。
 マルティン・ベックはその上院議員の警備対策本部の責任者にされる。が、ベックは目下別の殺人事件の捜査に関わっていた。映画の監督であったヴァルター・ペトルスが愛人宅で撲殺されたのであった。ペトルスが自らは有名な映画監督だと自称していたが、制作された物は有名になりたい少女などたぶらかして出演させるポルノ映画であった。当然いかがわしい部分がいくつか出てくるが、結局その映画に出演した女優の一人が、ペトルスの自宅の庭師で運転手であった男の娘だと判明する。男はヴァルター・ペトルスが一人娘を薬漬けにして、ポルノ映画に出演させたことを恨み、ペトルスを撲殺したのであった。
 事件が解決したことで、ベックは今度米国上院議員に対するテロ対策に本格的に乗り出す。国際テロ組織ULAGの要人暗殺方法が主にパレードをしている要人の通り道に爆弾を仕掛ける方法であった。テロリストは現場にいる必要がない。なぜならそこを通るのをテレビやラジオで確認することが出来るからで、その時離れたところで遠隔操作をして爆弾を爆発させればいいのだ。そのことをベックはラーソンから聞いて、トリックを仕掛ける。パレードの放送を15分ほど遅らせるのである。テレビやラジオで確認してテロリストが爆弾を爆発させたときは、もう上院議員はその場所を通過していたのである。
 ところが上院議員がスウェーデンの前王の墓所に来たとき、一人の少女が上院議員と一緒にいたスウェーデンの首相に銃を発射する。首相は即死であった。少女の名前はレベッカ・リンドであった。
 レベッカ・リンドは銀行強盗の容疑で裁判にかけられた後、住んでいたところを追い出され、子供と一緒に友人の家を点々としていたが、こんなことになる社会を作った張本人がスウェーデンの首相だと思い、彼を殺害すれば、もう少し社会がよくなるのではないかと思いはじめる。
 もともとレベッカ・リンドがアメリカに渡りたかったのは、自分の夫が脱走兵であり、アメリカに帰って刑に服していたからであり、その夫が自殺したことで自暴自棄となってしまっていたのであった。

 ということで、このシリーズを全巻読み終えた。私はこのシリーズを昔読んで面白かったという思いがあって、今回面白い本としてこのシリーズを紹介したくて再度読み始めた。しかし今は失敗であったと思っている。というのも当時夢中になって読んだ本でも、時間がたって読み返してもまた面白いとは限らないことを改め知らされたからであった。つまり読む側が、それ以降いろいろな本を読んで、変わってしまい、すれてしまったものだから、様々なところで疑問を感じることが多くなったのである。だから「これはどうかな?」と思っちゃうのである。鼻につくことが多くなってしまったのである。そのギャップが大きいものだから、こんなはずじゃなかったと感じて、このシリーズを読んでいた。
 たとえばこの本は1年に1作として10年間書かれたのだが、その間スウェーデン社会の変遷が悪い方へ傾くことを嘆くことに多くを費やしている。そのためどうしても政治色が強くなってしまう。今回それを強く感じた。昔はそんなことはある意味どうでもよく、むしろ話に展開を純粋に楽しんでいたような気がする。しかし今回はそれが妙に鬱陶しく、それがためにこの本は推理小説より社会派小説なのかと思えてしまうのであった。その点が残念で仕方がなかった。
 やっぱり昔読んで面白かった本はそのままにして置く方がいいのかも知れない。今読み返してしまうと、いろいろあらが見えてしまい、それが気になってしまう。面白い本だった、あるいは感動した本だったという思い出が無残に壊れていくのは結構寂しいものである。昔面白かったと思った本がまた読めるという期待があっただけに、この結果が残念であった。いくら読み返しても色あせない話というのは少ないのかも知れない。そんなことを思った。


評価
★★★


書誌
書名:テロリスト
著者:マイ・シュ-ヴァル ペ-ル・ヴァ-ル-
ISBN:9784047910904
出版社:角川書店 (1979/02 出版) 海外ベストセラ-・シリ-ズ
版型:398p / 20cm / B6判
販売価:入手不可

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