2010年07月28日
山口瞳著『山口瞳対談集』〈3〉
今回の対談の相手は、遠藤周作、丸谷才一、高橋義孝、俵万智、山本夏彦、池田弥三郎、中原誠、常盤新平、河野多惠子、野坂昭如、藤本真澄、吉行淳之介である。
さすが三冊目となると飽きがくる。あと二冊あるのだが、これは続けて読めないなという感じになっているので、一端これで休憩するつもりだ。
今回はこれといって面白い話はなかった。対談相手が結構地味な人が多い関係かもしれない。
強いて面白いなと思ったのは藤本真澄さんとの対談だった。藤本真澄という名前を初めて聞いた。調べてみると、この人東宝映画初代社長さんで、日本映画黄金期の名作を多数手掛けたらしい。
山口さんが「永遠の処女」と呼ばれる伝説的スター、原節子にしつこく迫る。なにせ藤本さんは東宝映画初代社長で、原節子の出演する映画をプロデュースした人である。当然原節子のことに詳しいに違いないとふんでいるわけだ。そこで今(対談した当時)でも、原節子は処女なのか、あるいは藤本さんが関係していたんじゃないかと勘ぐったりしている。山口さんの世代にとって、原節子が処女であることがかなり重要なポイントなのだろう。当然このあたりは私にはわからない。藤本さんも今頃原節子を知っている読者が少ないですよと言って、話をそらすのだが、山口さんは「いいんですよ。私が許す」としつこい。さすが「永遠の処女」である。なんだかんだと言って山口さんは、原節子に会わせてくれと藤本さんに頼み込む感じが、逆に山口さんの世代にとって、原節子はスターだったんだなと思わせる。
だいたい女優の処女性を大事に思う当たりに年代を感じちゃう。今じゃ誰しもやっているんだろうと当たり前に思っているから(ちょっと下品だね)、そんなことなど考えもしないが、処女性=清純派が純粋に思われていたし、未だにそう思っているあたりが、かわいいと思えば思える。(歳をとればとるほど脚色されてしまうのかもしれない)
さて、その原節子を使った監督の小津安二郎が藤本さんに「お互いにな、品行は少々悪くても品性はよくしよう」と言ったという言葉を紹介する。この言葉、山口さんの世代に通用する言葉じゃないかなと思った。確かに山口さんの若い頃の話を聞いていると、品行はよろしくない。少々下品である。が、だからといって人間性において品性が悪いというわけじゃないと思える。そこは自らの品性をおとしめるほどの行動にはなっていない。一本筋がきちんと通っているのが、話の端々で感じることが出来る。
今よくあるような品行が悪いのは、品性が悪いからそうなっているのとはまったく違う。どこかで一歩踏みとどまっているのがよく分かり、とことん行ってしまうところがない。
結局若い頃やった無茶な行動が逆にその人の人生訓みたいになっていて、その人が歳をとってヘンクツなオヤジとなって、あれこれ思うのである。山口さんにはそういうところがあって、今はそうしたヘンクツなオヤジが重宝がれ、そういう人に説教されることを望んでいるところがある。
山口さんのエッセイなどが長いこと愛読されたのも、そうした姿勢を持ったままの人だから、同世代の人には、そうそうと共感を呼び、深く同意しちゃうからだろう。そして若い人には、誰も言ってくれないことを、そういうヘンクツなオヤジに一言言って欲しいという希望があってのことだと思っている。そこがいいのである。そして私もその一人なのである。
「品行は少々悪くても品性はよくありたい」という言葉は確かにいい言葉だと思う。そして今まで読んできた山口さんの対談にはそういう姿勢がよく分かるのである。
ただ一つ気になったことがある。山口さんのくだらないダジャレである。こんなことを言う人じゃないと思っていたから、妙にそれが引っかかった。やっぱりホスト役として対談相手を持ち上げなければならないので、こうしたことも言わなければならなかったのかなと思った。とはいえ出来ればやめて欲しかったなあ。
評価
★★
書誌
書名:山口瞳対談集〈3〉
著者:山口 瞳【ほか著】
ISBN:9784846010157
出版社:論創社 (2009/10/30 出版)
版型:328p / 19cm / B6判
販売価:1,890円(税込)
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- by kmoto
- at 12:30
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