2011年01月20日
森まゆみ著『読書休日』
また森さんの古い書評を読む。
しかし世の中にはホンと知らない本がたくさんあるんだな、と思う。小さな志のある出版社で、いい本、面白そうな本がたくさん出ているのだ。でも私たちが手にする本はそのほとんどが大手出版社の出版物なのだ。何故そうなるかと言えば、それら出版社は資本力にものを言わせて広告を出し、書店の棚の一等地に自分のところ出した本を置かせるからだ。書店にしても、売れるものを主流に店頭に並べるから、そこからもれた本は読者の目にはふれないことなる。結局読者が本を選ぶ前に、店頭に並ぶ出版物はセレクトされちゃっているのだ。
考えてみるとこれだけたくさんの情報が手に入りやすくなって時代に、名の知れない本がたくさんあって、それがどういう本なのかわからないのだから、不思議な世界だ。
こういう時、例えば新聞の書評など力を発揮してくれ、埋もれている新刊を掘り出してくれるならありがたいのだが、どうも最近の新聞書評はちっとも面白くない。そもそもそこに紹介されている本を読みたいという気持ちにちっともならないのだ。このことはこの本でも森さんは書かれている。
実は森さん毎日新聞の書評欄で、コラムを5年、書評委員を2年半、常連執筆者1年、計9年やっておられたという。ここの掲載されている文章の初出はその書評だったのかもしれない。とにかくその関係で“書評”について書かれている文章が興味深かった。
まずここで「昔は『朝日』の書評に出ると千部は動くといわれたけどね」という話を書いている。これは私も聞いたことがあり、実際本屋で勤めていた頃、よく朝日の書評の切り抜きもって本を探している人を見かけた。日経もいたかな?今はどうなんだろう?書評自体面白くないから、こういう人は少なくなったんじゃないかと思ったりする。とにかく朝日の書評をきちんと読んでおくことは、書店員として必要なことであった。
「新聞の書評が面白くない、という声をしばしば聞く。つい先頃まで書評を書いていた私自身も、感じないことではなかった。これを読んでみようという気になる本が一冊もないことすらある。なぜなんだろう」
と書いて、まずは自らの経験から書く側から書評が面白くない点を考える。
一つには文章量が少なすぎるということをあげる。要するに紙面の問題だ。紙面に制限がある以上一冊の本の書評を書く場合だいたいが、その概要で終わってしまうらしい。
二つ目に日本の新聞の書評には批判がない、いいことばかり書いているという点を上げる。ただこれにはやむを得ないところがあるという。森さんは新聞で批判をばっさりやってしまうと、「切り捨て御免になってしまう」、と書く。要するにこれだけ巨大なメディアで批判された本の著者には反論の方法がないから、それを考えるとそう簡単に本の批判ができない、というのである。しかしよく考えてみれば、批判というか問題のある著作は最初から書評のリストにあがってこないのだろう。
三つ目に書評委員は大学教授に多く任されてきたことをあげる。結局書評が「権威あるもの」とするためには、大学教授、著名人を採用するに限るということなのだろう。でもこれもよく考えてみると、どうして書評が「権威あるもの」でなければならないのか、よくわからない。要はその本が面白いかどうかであって、面白いならどこが面白いか、それを読者に感じさせられるかどうかだけではないかと思うのだ。読者は面白い本を読みたいのである。
内容の知的裏付けとして大学教授、著名人の意見を求めるのは必要だろうけど、それをここでやることで、書評を「権威あるもの」とするのはどうなんだろう?知りたいのは「その本面白いの?面白くないの?」だ。決して権威じゃない。大学教授、著名人で連なる書評委員が持っている専門知識、専門用語を求めている訳じゃない。むしろそうしたものを噛み砕いて書ける人、教えられる人として大学教授、著名人を起用したのだろうと思いたいが、結局出来ずにいて、逆に一種の売名行為に似た、自分の知識をひけらかすことしかできない人選に問題があるのではないか、と思う。そして新聞側もそれが「権威あるもの」として勘違いしているから、書評が面白くなくなっているのだ。
以上が新聞の書評が面白くない理由を森さんの意見を参考にして考えてみた。私が森さんのエッセイが好きなのは、そこに表れる森さんの意識が「生活を手放さないで生き抜く」がすべての面で感じられるからだ。だからこの本で紹介された本もそうした視点で語られるし、そもそも「谷根千」がそういう発想で創刊された。私が新聞の書評で読みたいという気持ちにさせてくれる本とは、そうした自分の生活に身近にあるものか、あるい自分の好きな分野の本だ。(ただしわかりやすく説明して欲しい)
評価
★★
書誌
書名:読書休日
著者:森 まゆみ
ISBN:9784794961594
出版社:晶文社 (1994/03/05 出版)
版型:281,4p / 19cm / B6判
販売価:入手不可
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- by kmoto
- at 13:18
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