2009年09月07日
週刊東洋経済 8/29号
この号は特集として「アマゾンの正体」という特集が組まれている。さっそく手に入れ読んでみた。
特集記事はアメリカでアマゾンが今どんな立場にいるのか。あるいは最近のアメリカの出版事情の説明がほとんどなのだが、それでもアマゾンの成り立ちや、アメリカの最近の出版事情がわかってなかなか面白かった。
この特集の最初にアマゾン本社の写真がある。アマゾンの本社はワシントン州シアトルの中心街から車で10分ほどのところにある。この本社ビル、1930年代建てられた12階建ての煉瓦造りの病院なのである。確かに写真を見てみると、どう見ても病院に見える。従ってオフィスは全部個室だそうだ。従業員は昨年末で2万人を越え、手狭になったので、現在新本社が建設されているという。 アマゾンのカリスマ創業者ジェフ・ベゾス1994年7月に「カダブラ.コム」という会社を設立する。そして翌年アマゾン.コムと社名を変更した。社名をアマゾンとしたのは、アマゾン川地球上最大の川だからで、アマゾン川にあやかって地球上最大の本屋を作りたかったかららしい。まぁ、多分そういうことなんだろうなとは推測できた。
アマゾンの社風は“ケチ”で有名らしく、その節約文化の象徴として取り外されたドアを机に作り替えて使っていること。そして経費節減に貢献した社員に「ドアデスク賞」が与えられるという。
また、イノベーション力を喚起するために、会議室の四方の壁は全部ホワイトボードだそうで、さらに本社が元病院ということもあってエレベーターの速度が遅いため、エレベーター内にもホワイトボードが設けられているという。そこでそれを使って激論を交わすのだろう。
アマゾンでは商品の保管・物流を担う「物流インフラ」と、データの処理・蓄積を担う「ITインフラ」が固定費の塊で、その比率は2008年12月期実績で、売上に占める割合が14%にも及ぶという。この比率が大きいのか、小さいのかよくわからないけれど、要するにこの二つのインフラにかかる費用は社内コストだったわけだ。しかしそれを社内コストだけに納めずに、それを売上に変えるのである。まず「物流インフラ」を買収した企業のために力を貸すようにする。そして「ITインフラ」では、コンピュータの機能を貸し出すクラウドサービスとして使うようにしたのである。この雑誌の説明では、クラウド(=雲)とは、インターネットでつながれた多数のコンピュータの中に仮想的なシステムやサービスを作り出す考え方のことを指す、と書かれているが、これじゃなんののことを言っているのかよくわからない。要は今までのコンピュータはユーザー(企業、個人など)がコンピュータのハードウェア、ソフトウェア、データなどを、自分自身で保有・管理していた。それをユーザーはインターネットの向こう側からサービスを受け、サービスを提供した側にサービス利用料金を払う形にするのである。サービスを提供する側は自社の強力なサーバーがあればそれができることになり、まさにアマゾンはそうしたインフラを自社の事業のために持っていたわけだから、それを事業維持だけではなく、ツールとして使うことでインフラ整備や維持にかかる経費をそこから捻出できるメリットがあるわけだ。そしてアメリカではアマゾンがクラウドサービスのトップを走っているということらしい。
また電子ブックもかなり普及しているという。アマゾンではキンドルという端末を発売し、そこで書籍、雑誌、新聞など通常の料金より格安にコンテンツとして提供されているという。
電子ブックは一時ソニーなどで日本でも売り出されていたが、失敗に終わっている。その事情は日本独自の事情による。しかしアメリカでは①コンテンツの豊富さと安さ、②持ち運びやすさ(アメリカのハードカバーはアメ車並にごっつく、重く運びにくいらしいし、ペーパーバックは紙質が悪く長期間の保存に適していない)、③書店に本を買いに行くのに車で1時間もかかるのはざらという事情により、電子ブックは急速に普及しているという。
ここにはユーザーのインタビューも載っていて、キンドルが軽く、それこそ何十冊もデータとして保存でき、文字などの大きさも自由に変えられ、私みたいに細かい文字を読むのに苦労している人が重宝していると言っている。長期出張時も何冊も本を持っていく必要がなく、このキンドル一つあればいいとも言っている。
そうなのか!私は基本的に紙という媒体そのものが好きだから、電子ブックで本を読むというのはちょっとどうかなと思っていたが、電子ブック一つあれば何冊も重い本を持ち歩くことも必要ないし、文字の大きさも自由に変えられるというのも魅力的だ。ただ問題はやはり提供されるコンテンツの数だ。それが充実していなければ話にならないだろう。
さてこの特集はアメリカの出版事情だけでなく、日本の出版事情、それにともなうアマゾン・ジャパンの経営の魅力など少々書かれている。
日本の出版業界は1996年の2兆6563億円をピークに市場は縮小が続いていて、2008年は2兆177億円まで落ち込み、このままだと2兆円割れは確実に来ると言われている。発行点数は相変わらず高止まりの上に、返品率は上昇し、書店数は減っているのに書店の大型化により売り場面積は拡大しているという状態が続いている。地元の本屋さんが潰れ、チェーン化している大書店がのさばり始め、本を地元でちょっと買いに行くことができなくなっている。返品の上昇は出版社のとっても大きな負担である。こうした日本の出版事情であるため、読者も、出版社もアマゾンのやり方は魅力的だし、そのためアマゾンの商機はますます広まるばかりである。
ということはネットユーザーはさぞかしネットを駆使して本や雑誌を買っているんだろうなと思いきや、そうでもないところが日本のおもしろさである。
アメリカではネット書店のマーケットが全体の32%にも達しているのに(それでもそんなもんなのかと思っちゃうけど・・・)日本ではネットユーザー(ここがポイントだよ)1000人にアンケートを取っても、ネット書店だけで本を買っている人は全体の1.6%に過ぎず、41.3%の人はリアル書店(要するに本屋さん)で本や雑誌を買っているという結果が出ているのだ。
まぁこの手のアンケートってどこでどうやって取ったのか。あるいはどんなやつが回答したのか、といった問題があるので一概に「そうなんだ!」と鵜呑みにすることはできないところがあるが、しかしどこで取っても似たような結果が出るという。
それじゃ何でリアル書店をそんなり利用するかというと、①その場で持ち帰れる、②立ち読みしてから購入できる、③送料を負担したくない、④書店で本を探すのは好き、⑤雑誌を発売日に購入したいがベストファイブなのだが、なかにはレジでカバーやしおりをつけてくれるからとか、クレジットカードでなく現金で払えるからとか、いかにも日本人らしさが現れていて面白い。
でも利用するネット書店はアマゾンが断トツである。楽天ブックスが2位につけているが、雑誌などは楽天ブックスの方が充実しているらしく、しかも送料は一切かからないというから、これからはちょっと考えてもいいかなと思ったりした。
しかし日本の閉塞した出版構造は、ネット書店が当たり前の方向に向かう可能性が大だろう。このままでは地元の本屋さんでは本は全く買うことができなくなり、大きな駅にある大型チェーン店か、アマゾンでしか買えなくなる気がしてしまう。アンケートを鵜呑みにすることはできないにしても、まだ本屋さんで本を買いたいという読者がこれほどいるということを日本の出版界全体で考えて欲しいところである。
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- by kmoto
- at 16:14
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