2007年03月11日

新大久保

 高田馬場から新宿に出るため山手線に乗った。次が新大久保と知ってちょっと降りてみようかと思った。
 ここに昔二六堂の新大久保店があったのだ。もうかなり前に撤退しているのだが、実はここで日曜日や祝日に手伝いに出ていたことがある。休日に人手が足らないので、手伝ってほしいといわれ、手を挙げたのだ。(しかし本屋で働いていた頃は、本当にいろいろなことをやったもんだ)
 そういえば2001年1月26日に韓国人の留学生イ・スヒョンさんとカメラマンの関根史郎さんがホームから落ちた男性を助けようとして、結局3人とも電車にはねられ亡くなったのも新大久保の駅だった。それが映画にもなったし、駅には2人のためのプレートがあった。
 あの事故をニュースで見たときは、ああ、あそこは狭い駅だし、夜はちょっと薄暗いから、酔っぱらいが落ちても不思議はないと思ったし、しかも高架橋の駅だから、ちょっと逃げ道がなかっただろうなぁと思ったものだ。
 私も新大久保店の閉店時間が午後9時だったので、帰りはいつも薄暗いホームで、吹きさらし風が舞う中、新宿行きの電車を待っていたのを思い出す。

 だいたいどうして地元秋葉原から離れたこの新大久保に新規のお店を出すことになったのか?もともとは東販の紹介で知った店らしい。うちのメインの問屋は日販なのに、なぜ、東販の紹介に乗ったのか不思議なのだが、東販の調査で駅前は人通りが多いし(当たり前だ)、いい立地だから、是非出店すべきというのに、社長の無計画性とバカな当時の幹部(私は当時年数は長かったけど、素行が悪かったので、幹部にしてもらえなかった)が乗ったことが始まりであった。
 しかし後で聞いた話だと、そこを通る人のほとんどが在留外国人で、特に韓国の人たちが多いらしいので、東販のやつらが日本人と区別がつかなかったという落ちがついている。しかも駅前には大きなパチンコ屋が並んでいて、朝お店の開店時間の9時、いや10時だったかな、忘れちゃったけれど、とにかくその前にお店にはいるために、駅前を通るのだが、たくさんのブルーカラーの人たちが、パチンコ屋が開くのを待っていた。とても本が売れる地域ではなかったと思う。
 そもそも駅前ということだったが、確かに駅のすぐ横にお店はあった。けれど、駅のすぐ横の細い道を駅に沿って奥に20メートルぐらい入った場所にお店はあった。正直な話、とてもいい立地条件のお店と思えなかったものである。
 電飾看板をお店から駅前の通りに出すために、がたがたな道を押していったのを思い出す。こいつが重い上に、キャスターが壊れてしまっているので、なかなかいうことを聞いてくれず、雨の日など、カッパを着て、引っ張り出したが、結局ずぶ濡れになってしまった。こんなときなど、なんでオレはみんなが休んでいる日の朝に、こんなことをしなければならないのだろうと人生のむなしさを感じた。
 人生のむなしさと書いたけど、確かにこの店は私にとって、人生ってなんだろう?と考えさせられるお店であった。とにかく暇なのだ。やることがない。商品を並べるわけでもない。(休みなので荷物の配送がないのだ)ただレジにいて、お客の持ってくる本の会計をするだけ。時間がなかなか進まない。午後になるとバイトの子が来るから、その子たちと話はできるけど、妙に気を使わないとならないので疲れてしまう。仕方がないので、自分のいる店の仕事を持ってきて、この店のレジの中でやっていた。いったん店にはいると自由行動ができないので、ほとんどお店にいるはめになる。せいぜい、売上を夜間金庫のある近くの信用金庫まで歩いて持って行くことだけ。
 閉店時間になるちょっと前に、通りに出て、例のぼろ電飾看板を引き上げ、バイトの子を帰し、戸締まりを気にしてとぼとぼと帰る。
 当然こんな店は会社の負担になった。私はこの店を撤退すべしという急先鋒となったのだけれど、これを読んでもらえば当然だと思う。

 撤退後、後処理のため、新大久保の例の信用金庫に行った。お店の後にはコンビニが新しくできていた。そして昨日見たところ、やはりコンビニだけれど、ローソン99円ショップになっていた。なんだか奥行きが狭い感じがした。お店があった頃はもっと広かったはずだけど。バックヤードを広く取っているのだろうか?
 店の前の道は相変わらず狭い。多少舗装し直されているようで、でこぼこはなくなっている。しかし駅の場末感はぬぐえず、こんなところお店を出しちゃまずかったよなぁと思った。今ここを通る人たちの中で、ここに昔本屋さんがあったなんて知っている人はいるのだろうか?

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