2009年09月03日
久々に歯のこと
書泉ブックタワーの大きな看板がかっこよくなっているのに気がついた。何かスターウォーズみたいで、お金がかかっている感じがする。でもよかった。実はかなり心配していた。いつまでも文字の欠けた看板が汚らしくなっていたので、おいおい看板も直せないほど厳しいのかと思ったのだ。入り口の照明も暗いままだし、ビル全体がくすんでいて、あのオープン当時の華やかさがない。しかも明らかに在庫調整をしているのがありありで、本が以前より少なくなっている。その上店員も知らない顔の人が多くて、いかにも素人ぽい。
今でも今泉さんにオープン時「いいお店ができましたね」と言ったことを覚えているけれど、私は自分が地元の書店員で競合店に反対していた立場とは別に、本好きの人間として、この秋葉原に大型書店ができることは、個人的には歓迎していたのである。
結局私たちのお店は資本力にはかなわないし、今まで殿様商売をしてきたつけが回ってきて、必然的に撤退するしかなくなってしまったのだけれど、そういう意味では書泉さんは私たちに引導を渡す役目をした。だからつぶれちゃうのは困るのである。ブックファーストが早々に撤退したことは何とも思っていないが、書泉さんが撤退するのは、個人的に自分たちのかつてあったアイデンティテーが完全になくなってしまうから、何としても存在して欲しかったのである。だから壊れた看板がそのままであったり、照明の電球が切れたままになっているのを心配したのであった。でも新しい看板を見て、ああ、大丈夫なんだなと思い、一安心である。後はもう少し在庫を置いて欲しいなと思う。
さて、人のお店の心配より自分ことである。前歯の差し歯ついにぐらぐらしてきたのである。この差し歯は平成15年か16年頃に入れてもらった。当時最初にかかった歯医者さんで差し歯を入れるのに30万近くかかると言われ、驚き、どうしたものか悩んでいた。そしてここだけで話を決めるのも早計かと思い、セカンドオピニオンとしてこの歯医者さんに相談に言った。そしていろいろ相談した結果、この歯医者さんで差し歯を入れてもらったのである。10万円だった。
値段もそうだけど、とにかく昔から歯医者不信だった私に、懇切丁寧に私の歯の状態を説明してくれ、今後どのような治療を施せばいいか、私の意向も聞いた上で、差し歯も含め全体の治療方法も決めていった。私は自分の歯の質が親からの遺伝であまりいいものでないこと、不摂生でかなりひどい状態になっていることを知っていた。痛みも時々あったのだが、市販の痛み止めの薬を飲んでごまかしてきた。とにかく歯医者が大嫌いであった。
さしあたって前歯の差し歯を入れないと見栄えが悪いので、そこから治療には入り、以後悪いところ全部治しましょうということになった。先生と話して決めたことは、とにかく生きている間自分の歯が少しでも残っている状態にすること。そのためには治療もしなければならないが、日々のケアも怠らないこと。一年に一回は定期検診に来ることを約束させられる。
どんな治療をするにしても、またその後どうなるかなど、細かい説明をしてくれる。だから実際の治療時間より、先生と話している時間の方が長かった。予約の時間に行っても、前の患者さんに時間がかかって(たぶん私同様話の時間が長くてそうなっているのだろう)、予約時間にやってくれる方が珍しく、いつも30分ぐらい後になった。
たぶんこういうことは当たり前のことなんだろうけど、どういうわけかそれまで私が通院した歯医者さんはそうではなかった。悪いところを聞いて、あるいは見つけてがんがん治療を始めるところが多かった。もちろん痛みもかなり伴う。そんな歯医者さんばかりであった。だからこの先生は私にとって唯一信頼のおける先生であったのだ。私は従順な子羊のように、きちんと通院し、自分でも日々のケアをしていった。
ところがその先生からはがきが届く。廃業するというのだ。正直これには困った。けれど私にはこの歯医者さんしか頼れないし、新たに歯医者さんを探すのにはどうしたらいいのかわからなかった。結局私は以後そのままの状態で過ごすことになる。ただ日々のケアはきちんとしてきた。だから今日まで歯痛で悩むことはなかった。またつけてくれた差し歯もはずれることもなく、今日までもった。それだけしっかりした技術で先生はつけてくれた結果だろうと思う。それまでポロポロとれていたことを思えば、すごいことだと思うのだ。
けれど償却期間が過ぎたのだろう。差し歯がぐらつき始めた。こればかりは日々のケアではどうにもならない。下手をすれば、もう一度差し歯に入れ直しということだって考えられる。当然高額な治療費がかかる可能性がある。
とにかく至急に歯医者を探すしかない。しかし何を頼りにして探せばいいのか、皆目見当がつかない。ネットでの口コミ頼りに自宅の近所の歯医者さんを探すが、この口コミだってなんかあまりあてにできない感じだ。ほとほと困っていた。
ところがあれこれネットで検索をしていたら、以前お世話になった先生の名前を見つけたのである。さっそく先生のいる歯医者さんにメールを出すと、先生は去年の5月にそこを退職し、現在虎ノ門あたりで開業しているらしいという返事が、他の先生から頂いた。こうなったらとことん探してやろうと思い、さらに虎ノ門と先生の名前を入れて検索すると、ヒットする。そしてそのサイトに行けば先生の顔がある。やっと見つけたのだ。さっそくメールを出してみる。メールを出した後、何か追いかけみたいな感じがして、迷惑だったかなと思ったのだが、先生からメールがすぐ来る。私のことを覚えていること。喜んで治療しますと言ってくれている。よかった。会社の事務所から新橋ならそう遠くない。とにかく歯のぐらつきが気になるので、早い方がいい。すぐ予約を入れた。
行ってみると、西新橋の小綺麗なビルに先生の歯医者がある。受付を済まし、診察台に横になると、先生がお見えになる。懐かしい。そして来てよかったと自分でも安心する。少し昔話をし、すぐ差し歯の治療に入ってくれる。何とかそのまま使えそうだと言ってくれ、また以前のように取り付けてくれる。ただ、やっぱり土台になっている歯の状態が以前と変わっているので、次にとれたときは多分新しい差し歯を考えなければならないことを言われる。だからといってこの差し歯がすぐとれることはないと思う。とれるとすれば3年ぐらい後じゃないかなと言われるので、その時考えましょうと言ってくれる。
そして私の歯全体のレントゲンを撮る。それを見て以前先生のところでお世話になった頃から考えれば、悪いところはそれほど見あたらないとも言ってくれる。ただ左上奥に薄い影がある。これは中でばい菌が繁殖しているのだろうという。ここの歯は、神経を取ってしまっているので今は痛みがないが、いずれかなりの痛みが出て来る可能性があるという。だから早急にやる必要はないけれど、やるならやっておいた方がいいと言われる。奥歯なのでかなり大がかりになるけれども、どうしますかと訊かれる。
もう私は先生に再会したので、すべてを先生任せるつもりでいた。お願いすることにする。幸い慌てる必要がないので、ここに来られるときに来てもらい、少しずつやっていきましょうと言われる。
これで通院するところがまた一つ増えてしまった。胃腸がおかしくなり、もうこれで何年も悩まされているし、その上先月はぎっくり腰が再発し、整形外科にも行っている。本当に我ながらお金のかかる身体である。いったい私が何をしたからこんなに困らなきゃならんのだと恨み言も言いたくなる。けれど現実はどうしようもない。一つ一つ解決するなり、対処するしかない。
歳だということもあるだろう。人間歳をとると至るところがおかしくなる。機械の部品が消耗するのと同じである。だから老人の保険がお金がかかるのは今となればある程度理解できる。仕方がないのだ。私ももうすぐ53になるのだが、50年以上もこの身体を使ってくれば傷みもくる。ぼけるほど長生きをしたいとは思わないけれど、まだ死にたくない。もうちょっと生きたいと思う。だから医者に通う。身体のメンテナンスする。検診も受ける。歯にしても同様である。仕方がない。
治療が終わり、事務所に帰ると、最初に出した歯医者さんに、以前お世話になった先生と連絡が取れ、そちらに伺うことにしましたというお詫びのメールを出す。
昨日の朝、いつものように事務所に着いたら最初にするメール確認で、その先生から、「よかったですね」という返事があった。きっとここの先生もいい先生なのかもしれないなと思った。
- by kmoto
- at 05:31
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